ギミギミック




「テニスは二度と出来ないかも知れない…」

医者の一言で俺は目の前が真っ暗になった。

俺は今まで何のためにここまでやってきたんだ?

ぐるぐると、その質問だけが頭の中を駆け巡る。

そのままどうしたのかは覚えていないが、気が付くと俺は病室のベッドの上で天井を眺めていた。

「精一くん…」

入り口のところで立ち尽くす彼女を見やる。

恐らくさっきの会話を聞いていたのだろう。

「はっ、何が神の子だ。俺も所詮人の子なんだから、病気なんてどうすることも出来ないのにね…、そうは思わないかい?」

きっと今、俺の顔は酷いことになっているんだろうな。
つかつかと静かな病室内に靴の音を響かせ、俺に近づいてギュッと抱きしめてきた彼女、その腕の中で情けなく笑う。

「大丈夫だよ精一くん、またテニスできるよ…」

「…君に何が分かるんだよ!二度とテニスが出来ないって言われた俺の気持ちなんて分からないくせに、何が大丈夫なんだ!」

彼女に八つ当たりをするのは場違いだって頭の中では分かっているのに、誰かに当たらないとどうにかなりそうな気持ちを押さえられない。

「俺からテニスを取ったら何が残るんだよ、真田や柳、皆と全国三連覇を成し遂げると…コートに戻ると誓ったじゃないか」

彼女の背中に手を回し、顔を見られないように肩口に埋める。

『精一くんが弱気になったら、全部終わっちゃうよ…約束も何もかも』


−頑張れとは言わないよ、だって精一くんもう十分頑張ってるから−

病室に響く二つのすすり泣く声と共に、俺は彼女の為にももう一度コートに立つと心に決めた。







「幸村…」

「わかっているよ…さぁ、立海三連覇を成し遂げようじゃないか、いいかい…みんな?」


「イエッサー!」

彼女へ「全国三連覇」を贈るために、俺は負けない。



ガゼルと少年様に提出

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