企画 | ナノ
「今から外に出られん?」


いきなりかかってきた電話に戸惑いながらも、心の中では彼に会いたくてしょうがなかった私は気持ちが高ぶるのを感じ、二つ返事をするのだった。


さっきまでぼーっと見ていたテレビのニュースから今年最大の寒波が訪れると流れてきたので、日も落ちたし着込んだ方が良いかとひとりでうんうんと悩み、結局ジーパンにダウンジャケット、ポケットにはカイロを詰め込みファッションよりも暖かさを取った私である。


ちょうどタイミングよくインターホンが鳴り、出ると待ち望んでいた彼の声がして慌てて玄関を開ける。


「こんな時間にすまんのぅ。急に会いたくなったもんで。」


『いいよ、私も仁王くんに会いたかったし。それより、センター試験近いけど大丈夫なの?』


「何とかな。今も塾からの帰りなんよー。」


そういいながら私にぐたーっと体をのんかからせてくる彼を愛しく感じ、幸せな気持ちで満たされる。


『それでどこに行くの?』


「そんなに遠くには行かないから心配せんで、近くの公園ナリ!」


うきうきとそんな効果音が付きそうなほどに機嫌のいい仁王くん。

私の手を取って歩き出し、鼻歌まで歌い始める始末だ。


『でも何で公園なの?』


「あの公園は街灯が少ないじゃろ?」


『…街灯?』


「そ、街灯じゃ。暗い方が見えやすいからのぅ。」


『なるほど、大体分かったよ!』


多分仁王くんは星を見に行くんだと思う。

寒いほど空気が澄んで綺麗に星が見れるって言うし、この前仁王くんは星を見るのが好きだということが分かってからよく2人で見に行くことが増えた。


「ほら、着いたぜよ!」


そう言いながら私の手を引きながら公園の奥にある芝生に向かう仁王くん。

私と彼のお気に入りの場所の一つだ。


『この場所に来たの夏以来だねー。』


「そうじゃな、あの日は引退試合の後で幸村や真田らも来ちょったな。」


芝生に寝っ転がりながら空を見上げると、都会とは思えないくらいに綺麗な星空が広がっていた。


『凄く綺麗だね…、星の絨毯みたいだよ!』


「今日は最高の天体観測日じゃ!」


『それにしても、最初仁王くんが星を見るのが好きだなんてびっくりしたよ!』


「よく言われるなり。赤也やブンちゃんにバレたときなんか酷いもんじゃった…。」


『ふふ、そうなんだ。…でも私はとても素敵だと思ったよ。』


「うう、俺の姫さんは優しいのぅ、大好きじゃー!」


『姫じゃありませんよー。』


ぎゅーっと抱きついてくる仁王くんをよしよしと撫でてみる。


頭上の空に流れていく流れ星を目の片隅に止めながら、こんな時間が続けばいいなと思った高校3年の冬でした。









Lila様のお題「冬恋」で書かせていただきました!

雪をテーマに書こうとしていたんですが、いつの間にか星になっていました…。
でも可愛い仁王くんが書けたので、私的には満足です!

Lila様ありがとうございました

thanks クスクス様




水晶体に流れ星



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