02
『それってどういう意味なん…?』

「言葉の通りさ。あんたの家に似せて作ったわけ。まぁ、混乱するのも無理ないよな」

ふんふんと1人で納得している自称神サマを殴りたくなった。

「そんなに怒りなさんな。あんた、この家に来る途中何か違和感感じなかったか?」

いきなりの質問に戸惑ったが、いつもの曲がり角を曲がるときに変な感じがしたのは確かだった。

『うん。した、てかそれとどういう関係があんの?』

あ゛ーと髪を手でくしゃっと乱しながら、やっぱりかと呟いた。

「絶対理解しがたいと思うが、一応説明するわな」


そういうと神サマは一冊の本を取り出した。


「これはな、俺ら神に一冊ずつ配られる詩織ちゃんの居た世界に起きた我々に関係する出来事をまとめたものだ」

見た目は本当に普通の本で携帯用の辞書ぐらいの大きさだった。

「俺らは基本詩織ちゃんの世界を監視するのが仕事なんだ。そして、何か変化が起きたらこの本に書き込んでいく。すると勝手にその内容が他の奴らの本にも記される仕組みなわけ」

ここを見てみろと渡されたページを見ると、そこには『時空の亀裂』ということについて書かれていた。


「こいつはやっかいでな。千年に一度出来るか出来ないかというもので、あまり良い代物じゃない。この世にはごまんと色々な次元があるんだが、その亀裂が生じるとランダムだが、二つの世界が歪み引っ付いてしまうことがあるんだ。そしてその亀裂に入った者はかなりの確率で元の世界に戻れないとされている」

そして今回その亀裂に入ってしまったのが詩織ちゃんだ。


『そんなの冗談でしょ!?あり得る訳ないじゃん!』

「ああ。俺ら神が隠してきたからな。その出来るとされている時期がまさに今で厳重注意がなされていた。しかし我々が予測していた場所とは正反対の場所に出来たんだ。大体は東京周辺で起きていたんだが、まさか大阪で生じるなんて…。本当にすまない」


そう言って頭を下げている神サマ。

まだ頭の整理がつかない。

次元?亀裂?
そんなの夢の中だけじゃないの?


「もしも入ってしまった者が出た場合は見つけた神が面倒を見ることになっている。だからこれからは俺がお前の兄として暮らしていくことになるな」



『…元の世界には帰られへんの?』


「出来る限りは手を尽くしてみる。俺は周りの神よりも位が違うからな。しかし、0に近いと思っていてくれ」

『因みに此処はどの世界になるん?』

「テニスの王子様の世界になったようだな。しかし大阪ではなく神奈川に飛ばされたみたいでよー」


…は?

『テニス…?』

「そう、よく知ってるだろ?」

いやいやいや、漫画ですよそれ!

「だから言っただろ?世界は色々あるんだって。それにしてもまだマシな方だぞ。なんせ知っている世界だからな」


それにほれ!

ふと鏡を見せられた。


『あれ?』

そこには三年前の自分の顔。
中学手前ぐらいだったかな。


『って違ーう!!どういうこと!?』


「亀裂に入った者は何かしら体に変化が起きるみたいだな。まぁ、男とかにならずにすんで良かったじゃないか。クッ…」

明らか笑ってんじゃんか!!


「これからは俺のこと兄ちゃんって呼べよ。一応保護者的存在になってんだから」

『えー!そんなの見ず知らずだった人を兄ちゃんとか無理っだって…』

「じゃあせめて禮耶と呼べ。神の間ではそう呼ばれてるから」


さんざん悩んだ挙げ句やっぱり兄ちゃんは無理なので、禮耶と呼ぶ事にした。


――――――――

「今日の晩御飯の用意買ってきてくれ詩織」

『えー、早速初めててのおつかいですか?』

「土地を知るには自分の足で歩いた方が早いと思うしいいだろ?」

禮耶の言ってる事も一応合ってるので、しょうがなく行くことにした。


「今日はカレーが良いな!兄ちゃんは」

『兄ちゃんずらすんな!』


怒鳴りながら家を飛び出したのはいいけれど、道がまるっきり変わってる。

地図は貰ったけど、やけにスーパーまでの道のりが遠い気がした。


あの人とはやっていける気がしません。



新たな日常の始まり

(でも、こっちの世界にきてよかったと思う。)





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