09
コートに入り、部長に事情を説明していると、真田達が寄ってきた。
「幸村、なんだ後ろにいるおなごは?…二ノ宮はどうした?」
「ちょっと色々あったみたいでさ。今仁王に保健室に連れて行ってもらってる」
「D組の五十嵐か」
「柳知っているのかい?」
「データは揃っているからな」
「まぁいいや、今は彼女に聞きたいことが沢山あるからね。さて、どうして詩織があんな状態で居たんだい?」
「それはですね…」
「で、助けに入った詩織が代わりに水浸しになったと」
「そうです」
「詩織は女なのに喧嘩の仲裁に入るなど危ないではないか!」
「そう言うな弦一郎。あいつはそういう単純な性格、よく言えば素直なやつなんだ」
「そうか、それはすまん」
「いやいや、納得するところそこじゃないでしょアナタ!」
「ふふっ、真田に突っ込んだ女子初めてみたよ」
「興味深いデータが取れた」
「とりあえずこのまま様子を見た方がいいな。五十嵐を庇ったことで、何かよからぬ事が起きる可能性がある」
「そうだね蓮二」
すると珍しく仁王が慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたんだい仁王?詩織は?」
「今、ひどい熱出しちょるみたいで倒れよった。今はベッドに寝かせちょるが、どうする幸村…?」
「…とりあえず今はまだしんどいと思うから寝せておこうか。部活はどれぐらいで終わりそうだと思う蓮二?」
「今日は一年は五時までだと言っていたはずだが。先ほど幸村は先輩との試合を終えていたはずだしな」
「わかった。あと二十分で終わるな」
「俺も二ノ宮を送っていく」
「む、お前は後片付けがあるのではないのか?」
「今日の担当は丸井じゃ。俺は昨日に終わっとる」
「ま、いいよ。じゃあ五時十五分に校門に集合ね。仁王は詩織を連れてきて」
「了解ナリ!」
それから俺は幸村達と別れて着替えと荷物を持って保健室に向かっていた。
「さて、早く戻ってやらんとな」
曲がり角を曲がり保健室に入ると眼鏡紳士がおった。
「おや、怪我をされたのですか?」
「違うナリ。そこに寝ているのを引き取りにきたんじゃ」
「そうなのですか。彼女先ほど目を覚ましていましたよ」
「そうなんか、早く病院に連れて行った方が良さそうじゃのぅ」
「ええ、是非ともそうして下さい。申し遅れました、私柳生比呂士と申します」
「仁王雅治じゃ。二ノ宮が世話になったみたいじゃな」
「いえ、私は何もしていませんよ…では私はこれで」
柳生とかいう奴は丁寧に頭を下げて出て行った。
…なんかアイツ面白そうナリ。
「やばっ、時間に遅れたら真田がうるさいからのぅ!」
俺は慌てて着替え二ノ宮を背負い校門へ向かった。
眼鏡紳士に出会ったぜよ
(仁王、一分一秒の遅刻だ)
(さ、参謀細かすぎるぜよ。あ、幸村ー。面白そうな奴見つけた)
(ふーん、それは良いけど二ノ宮が今にも落ちそうなんだけど)