07
くそう、あの後幸村くん変にニコニコし出すし、仁王くんにも来てくれとせがまれ結局見に行くことになった。
「あーあ、ほんと幸村くん中一か?」
第一精神年齢高一が中一に負けてどうするんだ…とぶつぶつ言いながらテニスコートを探し歩いていると、まさかの集団に出会した。
「あんたなに丸井くんと仲良く話してんのよ!」
「そうよ、馴れ馴れしいよ!」
うわ…、入学して早々に苛めですか。
しかも丸井くんと言うことはテニス部絡み。
とりあえず見つからない程度距離を取り様子を見ることにした。
「いや、そんなこと言っても席隣りだったら喋るでしょ普通?」
「はぁ?まだ生意気なこと言ってるわよこいつ!」
おぉ、五人くらいに囲まれているのに張り合ってるよあの子!
第一私こういう行為許せないんだよねー。
こう見えても元の世界で鍛えられてきたから…お父さんに。
喧嘩なら負け知らずさ!
よし、と自分に気合いを入れ、鞄を地面に下ろし女の子の前に飛び出した。
「殴るなら殴るで勝手にすれば?」
「…もう、あったまに来た!」
取り巻きの一人がバケツ持っていたからどうせ水でも掛けられるんだろう。
腹をくくると言うか、投げやりな感じでもうすぐやってくる衝撃に備えて目を瞑った。
…が一向に水が掛けられる気配がない。
恐る恐る目を開けると、目の前にはずぶ濡れの女の子が立っていた。
…やってしまった。
どうせ叩くか殴るかだろうと思い飛び出した。
そこまでは順調だったんだけど、手の代わりにまさか水がくるとは思わなかった…。
おかげで制服はびしょびしょだ。
「だ、誰よあんた!?」
『いや、誰って言う前にびしょびしょに濡れちゃったんですけど』
「そっちが勝手に出てくるからでしょ!」
『こんな所でいじめを目撃して、黙って知らん顔出来るほど器用じゃないんですよ』
うっと言葉を詰まらせる集団。
すると後ろから服を引っ張られ、振り向くとさっきの女の子が私を見ていた。
よく見ると凄く端整な顔立ちで、可愛いと言うより綺麗と言った方が似合うと思う。
「あの、大丈夫ですか?」
『私は気にしないで!それより濡れてない?』
「いや…はい、大丈夫です」
『良かった。んでそこの人達さ、次こんな事してたら殴り込みに行くからね?』
にこりと微笑んで言うとあっという間に走って逃げてしまった。
『…ったく、この制服どうしてくれんねん、』
あ、ついムカつき過ぎて大阪弁に…。
「あの、本当にすいません私の所為で」
『いやいや、貴方が悪いことなんて一つもないし気にしないで!』
「でも…制服が、」
『じゃあこうしようか、私の友達になってくれるならそれでチャラ!』
「そんなんでいいんですか?」
『私まだ女友達一人も居なくてね、嫌かな?』
「いえいえ!こちらこそお願いします、先輩!」
…え?
先輩??
『え、私一年生なんだけど』
「嘘!え、大人びて見えるんですけど!」
そう言えば初めて幸村くんに会ったときにも言われた気が…。
『だからこれからタメでいいからね。それと名前教えて!』
「あ、うん。私D組の五十嵐真帆っていいます」
『A組の二ノ宮詩織です。これから宜し…くしゅ、』
「あ、いたいた!詩織何して…」
「幸村居ったんかー…って何かあったようじゃな二ノ宮」
やっぱり見つかってしまいました。
言い訳を考えるのが辛いです
(はーい、取りあえず仁王は詩織と一緒に保健室行ってきて、部長には言っとくから。彼女はこっちね)
(了解ナリ。…ありゃ相当ご立腹じゃ)
(幸村くんその子悪くないからね!)