子兎と跳ね馬
『家帰ったら何しようかなー』
今日は珍しく一緒に帰るメンバーの用事が重なっていたため1人で帰ることになった。
何をしようかと考えながらぼんやりと歩いていたが、椎菜は目に飛び込んできた後景に嫌な予感をビシバシと感じていた
『何あれ』
自分の家から少し離れた位置から自らの家の様子を窺って見ると、
家の周りに物騒な黒スーツ姿の男達がいるのが見えた。
そして、母親と居候達の安否を確認するため椎菜は気配を消しながら、裏口へと向かった。
一方、不信感を抱かれているとは知らず、ディーノは落ち着きなく椎菜の帰りを待ち続けていた。
次世代のボンゴレ十代目――――如いては裏社会のトップに立つことになる自分の妹弟子のためリボーンから連絡を受けイタリアから飛んできたのだ。
「せっかく土産も持ってきたのになー」
裏口から家に帰宅した椎菜は家の中、それも自分の部屋に見知らぬ気配を感じ眉をひそめる。
気配を消しながら自分の部屋まで歩いて行くと、知った気配があることに気がついた。
――――十中八九リボーンだネ。
そして勢いよくドアを開け中に入ると
「待ってたぞ」
とリボーンが笑う。
…………黙れクソガキ!明らかに面白がってんじゃねえヨ
「いよぉ、ボンゴレの大将」
『何ですか?』
あえて無視をしていたのに話しかけてこないでほしかった…←
「はるばる遊びに来てやったぜ!オレはキャバッローネファミリー10代目ボス、ディーノだ」
『………………………どうも』
くるっと皮の椅子を回転させ椎菜を見たディーノ
椎菜は品定めをするろうな視線を向けられ、同じように相手を品定めするように視線を向ける
お互い腹の探り合い。
「こりゃいいや」
突然笑いだしたディーノ
椎菜は訳がわからない。
………正直な所、こいつ頭大丈夫か?と失礼なことを考えていたのだが
「覇気がある、面構えもいい「足も長げえぞ」幸もありそうだ」
「だが胸はあるけど、童顔だ」
『横から余計なこと言わないでヨ』
「ボスとしての資質は十分だ」
……いやいや意味わかんねえよ
最後のはリボーンが思ってることでしょ…
それに童顔は“前”も今もだ!!
『リボーン、この人ダレ?』
「ディーノはお前の兄弟子だぞ」
『なんで私の部屋で待たせてるの?』
「お前の部屋は俺の部屋、俺の部屋も俺の部屋」
『そんなジャイアニズムいますぐ捨ててこい。それに勘違いしているみたいだけど私はボスになる気なんてサラサラない!』
ちゃっかり遠いところに避難しているリボーンをジト目で睨みつけているとディーノが突然笑い出した。
「ハハハリボーンの言うとおりだ!
こいつ昔の俺にそっくりだな」
『え゛?!』
「オレも最初はマフィアのボスなんて糞食らえって思ったもんだ…ハナからマフィアを目指す奴にロクな奴はいね――…。お前は信用出来る奴だ」
『目指すも何もないヨ?私はマフィアなんて大嫌い―――でも、あなたは気に入った精々私を失望させないでね?』
にっこりとほほ笑む少女が何を考えているかその場に居たものには理解が出来なかった。
その後、ディーノがリボーンのおかげで今じゃ五千のファミリーのボスだとか、泣く泣く椎菜のところに送ったとかいう話を聞いていた。
あ、と話の途中に突然ディーノが声を上げた。不思議そうに見つめる椎菜とリボーン。
外で待機をしていた部下に合図を送ると、十人がかりで縦幅1mくらいの木箱を運んできた。
「ボンゴレから預かっていた椎菜へのプレゼントだ」
ゆっくりと椎菜は木箱に近づいていき、そっと木のふたを開けると
そこには夜兎の象徴ともいえる“番傘”が入っていた。
口元が自然とつりあがるのを感じ、椎菜は自分が思いのほか喜んでいたことに気がついた。
そっと番傘を持ち上げるとディーノが驚いて目を見開いているのが見えた。
自分の部下が十人がかりで持ち上げていたものを目の前の少女は軽々と持ち上げてしまったからだ。
少女の手の中でくるくると踊る傘は、何年も―――何十年も彼女と共にあったかのように自然と馴染んでいた
廊下から声が聞こえ嫌がるイーピンと、それを追いかけランボが椎菜の部屋に入ってきた。
『ランボ!手榴弾もって遊んじゃ駄目!!』
その時、ランボが転び手榴弾が窓の外へ
お約束の展開にちょっと吹きそうになった。
「やべーな。外にはディーノの部下がいるぞ」
『あっ!そう言えば…』
すると、ディーノが窓から外に飛び出した
「てめーらふせろ!!!」
コートから愛用の鞭を取り出し、それを使い手榴弾を空高く投げた。
手榴弾は空中で爆発。全員無事である。
『案外ディーノさんってかっこいいねー』
「分かったか?ファミリーの為に命を張るのがマフィアのボスだ」
『何でもかんでもそこに結び付けないでよ!!』
「ディーノ、お前今日は泊まってけ」
「ん、オレは良いけでコイツらがな」
「部下は帰しても良いぞ」
『自分勝手だなオイ!』
部下にからかわれているディーノを見ながらそれでもいいかなと思っている自分がいるのも事実だが。
*****************
「さー何でも聞いてくれ、可愛い妹分よ」
『いや……あの、』
マフィアになるつもりはない=質問は無い
気に入られるのは嬉しいがディーノに質問することは無い
「そーいやシナ、お前ファミリーはできたのか?」
「今んとこは、獄寺と山本。あと候補はヒバリと笹川了平と……」
『友達と先輩と幼馴染だからね!?』
椎菜の知人の名を挙げられかなり焦った様子でそれを否定した。
確かにぴったりかもしれないが巻き込みたくはない。
『っていうかリボーン。何で私のなんかのトコに来たの?
ディーノさんとの方がうまくやっていけそうなのに』
「ボンゴレはオレ達同盟ファミリーの中心だ。どのファミリーより優先されるようになってんだ」
『うわっ知りたくなかったー』
憂鬱な気持ちにさせてくれる情報をわざわざどうも!!
「あらあらディーノ君、こぼしちゃって…」
奈々の指摘にハッと気がついたディーノはショックを受けていた。
ランボでもこんなに散らかさない。あのおバカさんは机の上にこぼしたものだったら余裕で食べる。絶対
「ディーノは部下がいねーと半人前だからな」
ディーノが溢したところを片付けている時のリボーンからの一言
ある意味究極のボス体質だね(笑)
『はいディーノさん。あーん』
え、今の状況?あまりにも食べ物が勿体無いから
ディーノさんの口に直接ご飯を持っていてあげている。
目の前のディーノさんは顔を真っ赤にさせ口をパクパクさせていて
横に居るリボーンはにやにやとこちらを見てる。
なんで?神威と神楽は喜んでたのに…
でも私たち以外にやっちゃだめだよって言ってたような……
まあいいや。
「普段フォークとナイフだから箸が上手く使えねェだけだよ////」
顔を真っ赤にさせてディーノは照れたようにそう言った。
他意のない行動にディーノはドキドキさせられたのだ。
「キャアアア!!」
浴室から奈々の悲鳴が聞こえ
みんな駆けつけようと立ち上がったが、ディーノが盛大に転んだ。
「ほれ見ろ。運動音痴じゃねーか」
『えぇええええええ!!!!』
驚き目を見開いていると、奈々が血相を変えて走ってきた。
「オフロ、オフロに〜っ」
急いで浴室に向かうとお風呂に大きな亀がいた。
「あちゃーエンツィオの奴いつのまに逃げたんだ?」
『これ、ディーノさんのペットですか?』
「(怖っ)あ、あぁ…水に触れるとふやけて膨張するスポンジスッポンのエンツィオっていうんだ」
椎菜がエンツィオを見ると今まさに浴槽をかじろうとしていたエンツィオはぴたりと動きを止めた。
『おいスッポン、お前うちの浴槽食ってみろ。
その瞬間お前をスッポン鍋にして食べちゃうゾ?』
怒気を滲ませながら話す椎菜を恐れてか、エンツィオはそのまま大人しく捕まり元の大きさに戻された。
おまけ↓
*************
椎菜の部屋
『ディーノさん』
「わ、悪かった……」
『ペットの管理はちゃんとしないといけないでしょう?』
「はい…」
「いいところを見せられなかった」と嘆いているディーノに椎菜はおもしろそうにこう言った
『何言ってるんですか?上の面倒見るのが下の役目ですよ。
もっとも私は上だろうが下だろうが面倒見ますけどね』
さらりと言ってのけた椎菜はすごく漢前だったらしい
後にディーノがそう語った。