デートその2 | ナノ
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「いいなあ。ルカは私服も決まってて」

カフリンクスが付いた7分袖のシャツ、海老茶色のベストに黒のスラックスは、すらりとした長身のルカによく似合っていた。
作りも丁寧で、良い物を使われているのがアルムの目にも分かる。貴族出身なだけはあるな、と思っていた。

「アルムくんだって格好いいですよ。変に気取るよりも、そのくらいシンプルな方が私は好きです」
「だって、これじゃあルカが恥ずかしくない?」

アルムが着ているのは、ラムの村にいた頃に着ていた普段着。
ルカの服のように装飾品があるわけでも質が良いわけでもないので、つい比べてしまうのだ。

「恥ずかしい訳がありません。何を着ていたとしても、私の大好きなアルムくんです」
「〜〜〜!!」

建前でもからかうような様子もなく言われて、顔が熱くなるのを感じる。
どうしてこんなに恥ずかしい事を平気で言えるんだろう。
アルムが考えていた事は口にも出ていたらしく「本当の事ですから」とルカが目を細めながら返した。

「ルカ!もう準備できてるよね!?」
「ええ、行けますよ」

これ以上話をしているとまた恥ずかしくなりそうな事を言われると思ったので、アルムは強引に話を終わらせルカの手を引き宿を出る。

広い大通りを通り過ぎ、賑わいのある小路に入ると様々な露店が並んでいた。

「ちょっと見て行こう」

今まで寄った街にもこんな風な露店はあったのかもしれないが、じっくり眺める機会がなかった。今ならそれを心ゆくまで楽しめると思うと、アルムの心は弾む。
人混みではぐれないように、しっかりルカと自分の手と指を絡ませて歩き始める。

どの店も土地特有の名産品や特産品が所狭しと並んでおり、目を楽しませてくれた。
その中で一際アルムの目を引いたのは、革製品の露店に並んでいたベルトポーチだった。

「おじさん、このポーチもう一つない?お揃いで持ちたいんだ」

言って、ルカの方を一瞥する。
店主は威勢の良い返事をして商品の収納ケースから同じ物を取り、アルムとルカの前に出した。

「坊主、見る目あるじゃねえか!こいつは俺の自信作でさ」

どうやら、店主は職人でもあったらしい。
ニコニコしながら材質や作り方のこだわりを説明してくれた。

「作りは同じですが…飾りボタンの石の色が違いますね。こちらは翡翠、そちらは紅玉でしょうか?」

言われてアルムはルカの指差す所を見てみる。
ポーチの留め具部分に使われているボタンに、小さな石が嵌め込まれているのを見つけた。

「おお!兄ちゃんは目が肥えてるな。正解…っつても、あんまり価値のない屑石なんだ。でも、どっちも魔除けのお守りにはなるぜ。
それに、石の色はあんたらの髪の色と同じと来たもんだ」
「よし。これ、どっちも買うよ。幾ら?」

迷いなく金入を取り出したアルムに、店主は「坊主が払うのか」と目を白黒させて尋ねる。
ルカも何か言いたげだったが、全部任せて付いてくると約束したので言いあぐねているようだった。

「うん。いつもよくしてもらっているからそのお礼に。そのためにお金も貯めたんだ」
「偉いぞ!日々の感謝を返すってのは大事な事だ。本当は1つ銀貨18枚の品なんだがな、その偉さに負けて2つで銀貨30枚。どうだ?」
「本当?ありがとう!」
「いいって事よ」

思いがけない値引きに、店主に礼を告げて代金を支払う。
それから商品を受け取り、アルムは翡翠のボタンのポーチをルカに手渡した。

「…アルムくん、本当によろしいんですか?こんなに高い物をいただいて」
「貰ってくれないと困るよ。何のために頑張ったか分からなくなっちゃうじゃないか」
「そうだぞ兄ちゃん。ここで受け取らなきゃ坊主の面子が立たねえ」

店主とアルム。
二人の気迫に押されつつも、やはり嬉しいのかルカは目を細めてアルムに感謝の言葉を述べた。

「おじさん、いい買い物ができたよ。ありがとう」

最後に店主にもう一度礼を言って、二人は露店を後にする。
去り際に店主は大口を開けて笑いながら「兄ちゃん、いい弟を持って幸せじゃねえか!大事にしろよ!!」と叫んだ。
ルカは苦笑しながら「恐縮です」と店主に会釈をする。
それから繋いだ手に力を込めて、驚愕で膝から崩れ落ちそうになっていたアルムを支えてやるのだった。



次が思ったより長くなったのでもう1つ増えそう

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