小話いろいろパラレルへん | ナノ


いつものパラレルではなく
アルム、ルカ、フォルス、パイソンの4人が仲良く楽しくシェアハウスしているという設定

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春の足音が聞こえてきたある日の事。

「アルムーッ!」

家じゅうに響き渡るほどの大声と同時に開かれた居間の扉。
ふたつの音にルカは思わず肩を震わせた。声の主であるフォルスは室内を見回し、目的の人物がいないと知ると大きなため息をつく。

「アルムくんは部活動に行っていますよ。なにか御用ですか?」
「ああ…今頼れるのはアルムしかいないんだ」

アルムにしか頼れないとはどういう事かとルカは怪訝に思ったが、フォルスが手に持っているもの…スマートフォンを見て合点がいった。彼が次に何を言うかも簡単に予想が付く。

「突然動かなくなってしまって、どのボタンも利かない」

やっぱり、とルカは心の中でつぶやいた。フォルスはスマートフォンがすこぶる苦手で、何か起こると幼馴染のパイソンに助けを求めている。今日はアルムしか頼れない、というのは幼馴染が不在のせい。

「ルカも得意でないのは重々承知しているんだが、見てみてくれないか」
「私が力になれるとは思えませんが」
「僕よりはましだろう?」

私がいるでしょう、と言わなかったのはフォルスの言う通りルカ自身も今の携帯電話が苦手だからだ。

以前はパソコンがあるから変える必要がないとボタン式の前世代端末を手足の如く使いこなしていたのだが、“お揃い”にしたいと“おねだり”する年下の恋人に根負けして買い替えを決行したのである。それからルカは常にアルムと同じ端末を持ち、機種変更する度に操作を教わっている。

仮に何かあっても、初めの買い替え後すぐにアルムが発した

『僕がルカに教えるのってなんだか新鮮だし、とても嬉しいよ。だからどんな小さなことでも遠慮しないですぐ聞いてね。その方が早いし』

という宣言に甘え切っているため、教わった事以外を自分でやってみようと思うどころかやるつもりもないのだ。
そんな自分にできることなどあるのだろうかと渡された端末の画面に視線を移す。
表示されていたのはウェブブラウザだ。

「見事に固まっていますね」
「そうなんだよ」

聞いていたとおり画面をタッチしようがなぞろうが、全ての物理ボタンを長押ししてみようが反応しない。どうしてスマートフォンにはタスクマネージャーや強制終了のショートカットキーがないんだ、とルカは内心憤った。

「止まる前はインターネットをしていたんだ」
「なるほど」

聞かれてもいないのにフォルスがそう告げたのは、

『何もしてないのに止まったりするわけないの。なんかしてるから止まるの。止まる前は何してたの』

とパイソンから再三言われていたからだろう。
正直に言って、フォルスがブラウジングをしていたことくらいルカでも分かる。パイソンやアルムならそれだけでも、いや画面を見ただけでアッサリ解決してしまいそうなものだが、もっと詳しい情報がほしかった。

「残念ながら、それだけでは解決の糸口がつかめません。ボタン式の携帯電話ならまだ対応できたのですが」
「ちなみにボタンのやつならどうしていたんだ?」
「カバーを外してバッテリーを抜きます」
「バッテリー…ひょっとしたら、これも抜けるんじゃないか」
「……探してみましょう」

それから二人して居間のテーブルの前に座り込み、端末の裏側や側面とにらめっこが始まった。
ここのつなぎ目が怪しいだの、カードスロットから開かないかだの、この穴をピンで押せば取れないかだの。

「…取れないな」
「ええ。これ以上は特殊な工具が必要ですね。それを揃えるくらいなら、放電をしながらアルムくんかパイソンの帰りを待ったほうが早いと思います」

思いつく限りの手段を考え試したが、バッテリーどころか背面カバーすら取れる気配がない。

「そうか…分かったよ。ありがとうルカ。色々見てくれて」
「いえ、力になれずすみません」
「完全に壊れてしまったわけじゃないだろうし、誰か帰ってくるまでお茶にしよう。付き合ってくれたお礼に、とっておきの焼き菓子を出すよ」
「それはごちそうさまです」

二人が茶会を終える頃に帰宅したパイソンがいとも簡単に解決したのだけれど、「ルカの携帯かパソコンから調べればよかったんじゃない」とすっかり失念していた事を言われ、二人は思わず顔を見合わせた。

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アルムくんに甘やかされすぎて調べることを忘れたルカさん
今の端末って強制終了するのにボリュームボタンも押さないといけないんですね。今回調べて知りました



  

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