「我雨、この子は僕の彼女だよ」 そう言われた時は驚いた。 こんな事を思うのは恐れ多いが、この人に付き合える人なんていたのか。 「初めまして、」 丁寧に言ってニコッと笑う姿は、なるほど雷光さんが惚れるだけあって可愛らしかった。 そんな人だからこそなんで雷光さんを?なんてまたもや恐れ多くも考えた。 確かに雷光さんは容姿も性格も考えも、素敵だと思う。 ただ、服のセンスは桁外れているように思う…のは僕だけではないはず。 「我雨、失礼な事を考えるのはおよしよ」 「そ、そんなこと滅相もないですよ!」 この人は人の心を読むのが上手い。 もう変な事を考えるのはよそう。 …そう思った矢先。 「ねえ雷ちゃん、ケーキ買って来たからあとで我雨さんと食べてね」 「…っ…」 耐えられずに速攻で後ろを向いて、何とか吹き出すのを堪えた。 わざわざケーキを買って来てくれるなんて、気の回る人だなあと感心した…のはさておき。 ら、雷ちゃんって…! 雪見さんも壬晴君も、下手をすると宵風まで笑うだろう出来事に屈んだまま息を落ち着かせようと努力する。 「我雨さん、大丈夫ですか?」 心配そうに声を掛ける彼女に、雷光さんは優しく笑う。 「大丈夫さ、昨日から風邪気味だったみたいだから咳が出そうになったんだよ。お茶入れてからいくから、先に部屋行っててくれるかな?」 「うん、わかったよ雷ちゃん」 雷ちゃん…! またもやクリーンヒットしてしまったそれを必死に抑えていると、彼女が部屋へ向かうのを見届けた雷光さんの手のひらが僕の頭でべしっという良い音を響かせた。 痛いです、雷光さん。 叩かれた頭をさすりながら雷光さんを見上げると、サディスティックな笑みで僕を見ていた。 「次、笑ったら二回叩くから覚えておいでよ、」 ごめんなさい、雷光さん。 なんて思った矢先に、また。 「雷ちゃーん、まだー?」 「っ…」 なかなか来ない雷光さんに痺れを切らした彼女の声。 ハッと気付いたときには、僕の頭に雷光さんの手が向かっていた。 ごめんなさい、雷光さん。 (いっその事君も僕のことをそう呼ぶかい?) (…遠慮しておきます) |