「エドおにいちゃんただいまー!」 玄関の方から元気な声が聞こえ、おかえりと大き目の声で返す。 ふいに、聞こえるはずの無い鳴き声がした。 「ワン!」 「あっ、さきにいっちゃだめだってば」 ドタドタという音を立てて、近づいてくる声。 「ワンワンッ!」 姿を現したのは子犬。 それも、懐かしい記憶を擽る姿で。 「デっ、デン…?」 そんな訳ないじゃないかと思いながらも呼ぶと尻尾をパタパタと振ってじゃれてくる。 「アル、これどういう…」 走って来た子犬と少女より少し送れて部屋に入って来た弟にどういうことかと訴えると、複雑な表情で笑って見せた。 「散歩途中で捨てられてるのを見つけたんだ。育てても…良いでしょ?」 アル、お前なぁ…前から拾ってきちゃ駄目だって言ってるだろ? そう言おうとしたはずなのに、口からは発されない。 「こいつ…デン、なのか?」 「ワン!」 アルに訊いたはずの問いに答えたのは子犬。 思わず笑いが零れた。 「…ちゃんと育てような、」 そう言うと少女もアルも心底嬉しそうに笑うから、自分の頬も緩むのを感じた。 (心なしか、子犬も嬉しそうで) |