それは唐突だった。
何気なく、そう、本当にふらっと屋上に足を運んだだけだった。
しかしあまりの有り得なさに我が目を疑わずにいられなかった。
これ、現実だよな?
気付かない内に半口を開けて間抜けな顔をするほど、それは見たことのない光景だった。
しばらく脳の活動が停止して、理解した頃には笑い転げたくなった。
予想してはいたものの、どうだろうなあと思っていた事象である。
長い前置きはさておいてズドンといこう。
古泉一樹の、真っ赤に狼狽えた顔。
笑い声が漏れないよう口元を手で押さえて、しまいには咳き込んでしまった。
マズイ、古泉にバレる。
そう思った時にはもう遅く、

「っ…キョン君……!?」

見る見る内にコイツの顔は青くなって、ああ、超能力者だ何だって言ってもちゃんと人間だったんだなぁと再認識した。

「涼宮さんには何も言わないで下さいね」

見せ掛けだけでも何とか落ち着かせてそう言った古泉にさすがだなと思ったけれど、それとこれとは別だ。
ちなみにそれは俺の意思と関係なく、もちろんのこと古泉の後方にいる谷口ランク上位に名前が挙がっていた彼女の意思とも関係ない。
つまり、既に手遅れだということで。
お馴染みのやれやれ…のポーズではなく、顔の前で手を合わせた。
すまん。

「古泉君、あたしの名前呼んだ?」

俺の後ろから聞こえた声。
面白いことを見つけた子供のような笑顔を浮かべるコイツに、古泉はまた顔面蒼白に逆戻りした。
今日は記念日か、はたまた厄日か。
何気なく屋上に来たことを心の中で謝りつつ、ハルヒが着いてきたのは俺のせいじゃないと弁解しつつ、いくら古泉でもこの場をどう切り抜けるのかと心配しつつ、そして古泉の後ろに立つ彼女も気まずいだろうなぁと思いながら、やはり俺は両手で空を仰いだ。
やれやれ。


(好きなあの子から、告白とキス)
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