※性描写を含みます。義務教育を終えていない方、苦手な方はお戻り下さい。




憎い、と思う。
自分に覆い被さるこの男を。いつもと変わらない表情を。

「っなに、するのセバスチャン…!」

痛みも衝撃も何もなく、気が付いたらベッドに沈んでいるなんて、手馴れているいないの問題ではない。
さすがは悪魔といったところだ。

「お嬢様が私をご所望のようでしたので。違いましたか?」

「そ、んなわけ…」

ない。
と、言い切れない。事実私は彼を望んでいた。
伸びる手を拒めない…いや、拒まないことを知っている執事はふっと小さく口元に笑みを作ってそのまま指を滑らせた。頬から伝わる低い体温にびくりと肩が震える。

「本当に嫌なのでしたら仰って下さい。主の意に反することは致しません」

「主って…私じゃなくてシエルでしょう」

「お坊ちゃまの親戚であられてこの家に滞在されてるのですから、この家の執事の私にとっては主ですよ」

まったく屁理屈が上手なものだ。私はセバスチャンの正体を知っているのに。
とはいえ滞在なんて聞こえがいいものの、実質は居候のようなものなので反論するのも気が引けた。シエルの許可を得ているから問題は無いけれど、ここ数ヶ月ずっと身を寄せている。

「それで?拒否はしないのですか?」

「…私が欲しいもの、わかるんでしょう。だったらセバスチャンが思う通りにして」

「かしこまりました」

執事はわざとらしいまでに恭しく私の手を取って口付けた。
そんな姿も様になっていてくらり、とくる。触れた場所から毒が回っていくような。
丁寧にドレスを脱がされて、身体のあちこちにキスをしながら下着も脱がされ一糸纏わぬ姿になる。
もう既に熱が上がってしまい肩で息をしていると、セバスチャンがくすりと笑った。

「今からそんなでどうするんですか、お嬢様」

「だっ…て、ぇ、っ…」

自分で聞いておきながら返事を必要としていないのか、言い終わらないうちに胸に手を伸ばした。
ふにゃり、と柔らかい感触に指を沈めて優しく包み込む。

「セバっ、セバ、スチャン、それ、っや…!」

胸元に顔を埋めたセバスチャンが頂を吸い上げた。時々唾液の音を立てて弄ばれ、それがまた羞恥心をひどく煽る。
下肢がどくんどくんと脈打ち、自分でもわかるくらいにそこが溢れている。
恥ずかしさともどかしさで視界が滲んだ。

「もう、限界ですか?」

呼吸が熱くて精一杯で、返事ができない。
彼の瞳を見て頷けば、手が胸元から腰へと下りて水気を含む場所に触れられた。
そっと指の腹で周りを撫でられる。十分だと判断したのか、指を滑り込ませて解すように内壁を刺激していく。

「ん、あ、あぁっ、セバス、もう、もうっ、」

「ええ…少々お待ち下さい」

力の入らない手を伸ばすと額に小さくキスを落とされ、潤うそこから指を抜き取られた。
そしてすぐに彼の分身が宛がわれる。冷たい指先と反対にすごく熱いそれに身震いをする。

「いきますよ、お嬢様」

「う、んっ…は、あぁあっ、あ…!」

少しずつ、少しずつ労わるように押し込まれる。自分の中に彼の一部が入っているのかと思うと、余計に下腹部が轟いた。

「あっ、あぅ、セバ、スチャ…」

揺らされながら、顔の横に置かれた彼の手を掴む。「どうしましたか?」と聞いてくれるセバスチャンがいつもより少しだけ昂ぶったような表情をしていてすごく愛しく思う。少しでも何か感じてくれているのであれば嬉しい。
言葉を聞こうと腰の動きを緩めてくれた彼に手を伸ばした。

「ぎゅっ、て、した、い、」

途切れ途切れになりながらも声にすれば、セバスチャンはわかりましたと伸ばした手が届くように背を屈めてくれた。
ぎゅう、とそこにしがみつくと彼も私の背に手を回す。シャツ越しに触れ合う身体が熱を持つ。
一つ一つの動作が優しくて泣きたくなる。まるで壊れ物を扱うかのように、愛しい人に触れるように、抱いてくれるのだから。

「はぁ、あっあっ、あ、もっ、イっ、」

「どうぞ、我慢せずに」

耳元で熱と色気を含む声が吐き出されて身体がびくりと震えた。

「っあ、あぁ、んっ、セバスチャ、イく、だめっ、だめぇっ…!」

力強く奥に打ち付けられた衝撃で頭が真っ白になる。おかしくなりそうで目を開けていられない。
ぎゅうう、と無意識に容赦なく締め付ける膣にセバスチャンも数回腰を動かして小さな息を漏らし、白濁を注ぎ込んだ。
達したばかりのそこに感じる熱が余計に意識を薄れさせる。

「はぁ、はっ、あ、セバ…」

「良いですよ、寝てしまいなさい」

「んぅ、やっ、だ…」

この何ともいえない幸福な時間を、逃したくない。
たとえ仮初めでも、私にとっては何にも代え難いこの時間を。
セバスチャンが思った私の欲しいもの、あながち間違ってはいない。
でも、正解でもない。私が欲しいのは、貴方に与えられる快楽なんかじゃなくて、ねえ、この温もりなんだよ。
貴方自身を、恋しいと、愛しいと、求めているんだよ。
きっと理解できないだろう。彼には、人間のくだらない娯楽か、弱さ故の感情か、馬鹿げた思考としか思われないのだろう。
そんな気持ちを打ち明けたら、きっと、彼は。

「駄々を捏ねないで、ほら、目を閉じて」

「やっ、だぁ、せばす…」

「大丈夫、どこにも行きませんから…ね?」

優しい声と一緒に、髪の毛を透かれて段々と心地良さに誘われる。
ずるい。そうすれば眠ってしまうとわかっていてしているんだ。

「おやすみなさい、名前さん」

眠りに落ちる寸前、唇に柔らかい感触がした。
きっともう夢に入っていたんだ。
そんなことはあるはずがないのだから。
私の名前を呼ぶことも、口付けをすることも。



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