「ア…レン、君?」
「はい?」

不安そうな顔をした彼女を出来るだけ安心させようと気を持ち直して声を安定させた。

「何で…こんなことになってるのかな」
「それは、…」

彼女を不安にさせないような返答を、と思ってももう指さされてしまえば無理だった。

「……彼の、せいですね」

彼女の目は相変わらず同じ方向を見たまま零れそうな水分を溜めている。

「…この間」
「はい」
「この間、やっと久しぶりに休みが出来たの。だからね、お買い物に行って、お洋服とか、おやつとか、小物とか、貯めたお金で買ってきたの。
どうせ着る機会がないのなんてわかってるけど、これでも女の子なんだよ、アレン君ならこの気持ちわかってくれるでしょ、神田には無理だろうけど」
「はい。単細胞には無理ですね」
「うん、ほんと単細胞、救いようが無いよあの喧嘩バカ」
「そうですね、わかります」

半ば八つ当たりではあるがどちらの気持ちも理解できる。
エクソシストとして生きていくこととおしゃれを楽しみたい気持ちは別物なのだ。
若い女の子ともなれば尚更である。

「おーい!ユウが両方仕留めたさー!」

後ろから手を振って走ってくるラビの衣服は心なしかボロボロだ。

「ほんと?!さすが喧嘩バカ、あとでハグしたい」
「気持ちは分かりますがそれはやめた方が良いですよ、バカが移ります」
「どした、ユウにひどい言いようさね」
「まあ、色々あったんですよ」

肩に手をポン、と置きながら視線で彼女が先程まで見ていた場所を示せば何となく理解したのか頷いた。

「…よし。じゃあ私ちょっといってきます」
「えっ、ちょ、それは…」

慌てたラビの肩に再び手を置いた。
そしてまた視線で示す。

「…いってらっしゃい」
「うん、またあとでね、アレン君、ラビ」

そう言って走り出した彼女を止めるなんて僕には無理だった。
例えその手に発動済みの武器が握られていようと、彼女を止めるなんてあまりに非道に思えたのだ。



(コムイ、ご愁傷様だな)
(というよりご臨終様ですね)
(うまい、座布団一枚…って、ひどいなアレン)
(自業自得ですよ)



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