瞳に映ったその光景に、目を見張った。 「総悟…」 薙ぎ倒した攘夷浪士の向こうに立つ、隊長の姿。 いつもの隊服を着ていて、愛刀は鞘に収めたままだ。 「…久し、ぶりだね」 何とも言い表せない感情が込み上げて、苦笑しながら目を合わせた。 彼は肩を竦めてそれに返事をし、口を開いた。 「腕、上がりやしたねィ」 少し離れた所からぶつかり合う金属の音が聞こえてくるけれど、彼の凛とした声は掻き消される事無く耳に届く。 「俺を目標にしてたもんな。追い付けそうですかィ?」 挑戦的な、けど優しい、見守るような彼の瞳に心が温かくなる。 「総悟には、まだまだ追い付けそうもないよ」 喋りながらも、違う言葉が喉の辺りまで込み上げる。 その胸に飛び込みたいと、本能が叫んでいる。 「名前、」 「ん?」 「大好き」 私が言えないことを、抑えている言葉を、彼はこうも簡単に言ってしまうんだ。 「…知ってる」 大好きだよって、その言葉だけで全てが和らいだ気がした。 それくらい、私を救ってくれる君の言の葉。 「私も、大好きだよ」 それを聞くと彼は、知ってる、と嬉しそうに顔を緩めた。 お互いにあと一歩、を進むことはない。進めない。 手を伸ばせば届く距離、だけどそれはきっと許されない。 でも心はあなたの隣にいると…そう、自惚れてもいいよね? 「副隊長ー!」 どこからか隊士のものと思われる声と足音が近づいてきた。 「ほら、呼んでまさァ」 「…うん」 促されて振り返るのに少し遅れて、隊士が向かってくる。 「残りの浪士は降伏しました、後片付けは自分らがやるので副隊長は休んでいて下さい」 「わかった、ありがとう」 そう言って振り返り彼が居た場所を見ると、誰もいなかった。 「…ありがとう、」 「副隊長?」 小さく言った私に聞き取れなかった隊士が聞き返す。 「何でもないよ。じゃああとはお願いね」 そう言い置きもう一度彼の居た場所を見て、踵を返した。 二度目のさよなら ──── もう彼は死んでますよって話 |