「よし、じゃあいくよ」
「はいっ…!」
消毒液を染み込ませたコットンを用意した俺と、手のひらをプルプル差し出しているなまえさん。砂を流すためにとりあえず水で手を洗ってもらったんだけど、その時点でかなり痛かったらしくひいひい言っていた。それ以上の痛みが来るのを待ち構えて、なまえさんは手のひらを凝視している。ちなみにこの時点で既に涙目だ。
「なまえさんもしかして注射とかも怖い人?」
「うん、注射とか採血大っ嫌い…泣きかけるレベルで嫌」
「だけど見ちゃうんだ?」
「見たくないけど見てないほうが怖いんだもん…」
「はいじゃあ見ててね」
「あっちょっ待っ…っつう…!」
ポンポンポン、と優しく傷口を拭っていく。なまえさんはその度に痛そうな声を上げている。早く終わらせてあげたくても、砂利が入り込んでしまっているところがあるからどうしても少し力を加えなければいけなかったりして、痛みを耐えるためになまえさんの目は途中からきつく閉じられていた。
「ひっ…う、う、…んぅぅ…!」
「右手終わったよなまえさん。左手貸して」
「はい…。っう〜…!ひぃうっ…!」
「はい、よくできました。もう目開けていいよ」
「お、終わった…?」
「うん。あとはガーゼ当てて包帯巻くだけ」
「ありがとう…」
「、いいえー」
ぱちぱち、と潤んだ目で瞬きしてからふにゃんと笑ったなまえさん。この人の、庇護欲を掻き立てる何かはどこから出ているんだろうなあ。

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