残業で疲れてくたくたになって帰ってきた日のことだった。
シャワーから上がって温めた冷凍焼きおにぎりを頬張りながら、何となく付けたテレビ。面白い番組がなくてひたすらチャンネルボタンを押していると、一つの衛星放送で手が止まった。オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブからの生中継。
ぞわり、と全身に震えが走った。スポーツに興味なんてなくて、初めて見るテニスの試合なのに。残業疲れも、明日の仕事も、まだ手を付けていない焼きおにぎりも忘れて、夢中で見入っていた。太陽の光がグリーンの芝生を鮮やかに照らして、彼を引き立てている。力強い一挙一動から、鋭い眼差しから、目が離せなかった。
そうして私は彼――幸村精市に心臓を鷲掴みにされ、翌日寝坊して会社に遅刻したのである。





「いやーそれにしてもなまえがここまでハマると思わなかったわ」

日曜日、友人の朋子宅にて。朝早くに電話で呼び出されて、朝ご飯をごちそうになりながら幸村精市のことを話していた。幸村くんがとにかく格好良いだとか、幸村くんが出てたウニクロのCMを録画して何回も見てるのだとか、ウニクロから限定発売された幸村くん着用モデルのユニフォームを買ってしまったのだとか。

「私もまさかスポーツ選手好きになると思ってなかった」

「運動大っ嫌いの運動音痴だもんね」

「ね。何があるかわかんないよ」

結構なボリュームのあった朝食を平らげて、手を合わせてから、で?と朋子に尋ねる。ここに来たのは幸村精市の話をする為ではなくて、重大発表とお願いがある、と頼まれたからだ。

「私ももう二十半ばじゃん?」

「うん」

「それで…ついにプロポーズされて結婚することになりました!」

「えっ…えええええ!」

これは本当に重大発表だ。びっくりして奇声を上げてしまったが、朋子は「いえーい」ととても軽いノリでピースした。もっと喜ぶとか惚気るとかすべきなんじゃないだろうか。おめでとう、と一先ず言葉だけでお祝いしてから、お願いって?と聞いた。あがり症の私に式で無茶振りをしたいとかだったら断る、と付け足して。朋子は笑って首を振った。

「だいじょぶだいじょぶ、そんなんじゃないから。ただ、式に向けてエステとか行くからなまえも一緒に行こうねっていう」

「えっそれ私行く必要ないんじゃ…」

「あるのよ。式に誰呼ぶって話になって彼氏と話したらね、大変なことがわかって」

「大変な…?」

「彼氏の友達が超絶イケメン軍団」

・・・。え、うん、そう。としか言いようがない。一気に白けた私に、朋子が尚も真剣な顔で続ける。

「いやこれほんとに。真面目に」

「別に私結婚式で男漁りしなくていいんだけど」

「それはわかってるわよ。でもものすっごいなまえの好みド真ん中なのがいたから、会わせたいなって思って」

「うーん…」

「ね、一人でエステ行くのも寂しいしさ。折角だから一緒に行こうよ」

「うー…そう言うなら」

「よっし決まりね!じゃあ今日早速なまえのドレスとか見に行きましょ。エステの予約も入れて…あ、当日の美容室はもうリストアップしてあるから任せといて」

「ちょっと待ってほんとは寂しくないでしょ」

「てへぺろんぬ」

まあ、ほんとにあんたが土下座して泣くくらい良い男だから楽しみにしてて、と朋子が笑った。あんまり楽しみになれないけど、おめでたいことのあった朋子が楽しそうだから、まーいっか。





エステに短期で通った甲斐があって、人生史上で今が一番輝いてる気がする。全身つるぴか、化粧ノリ良し、ついでにネイルサロンまで連れて行かれたので爪までピカピカ可愛いジェルネイル。朋子が何時間も私を着せ替え人形にした集大成のコーディネートは文句なしに可愛いし、朋子が予約してくれた美容室のおかげで自分じゃできないようなお洒落ヘアスタイルになっている。…何だか玉の輿を狙った婚活パーティーに挑むような気分。朋子の気合いの入れようがおかしいと思う。普通花嫁さんが自分磨きに躍起になるよね。朋子は私と違って元の素材が良いからそんなに手を掛けなくていいのかもしれないけど。
式場に着いて新婦の控室を訪れると、マーメイドラインのウェディングドレスを着た朋子が出迎えてくれた。いつもとは違うメイクで、息を呑むほど綺麗だ。

「どお?」

「もうすんっごい綺麗!うわーこれは彼氏さん贅沢者だわ…」

「ふふー、ありがと。なまえもかわいい。さすが私の見立てね」

「ほんとに。なんかもー自分じゃないみたい」

「これなら第一印象もバッチリ間違いなし」

「…まだそれ言ってたの?」

「まだも何も……そうね、そろそろご対面といこうか」

「えっ?今?」

「まだ時間あるし大丈夫。ほらほらレッツゴー」

朋子に背中を押されて廊下へ進む。数部屋離れたところに新郎控室と書かれたボードが下げられている。

「なまえ連れてきたよ〜。いる?」

「ええ、いますよ」

「いいって」

「え、私が開けるの?」

「そう。いいから開けてみ」

朋子の彼氏さんに会ったこともほとんどなくて数回見掛けたくらいなのに、朋子は満面の笑みで私が扉を開けるのを待っている。よっぽど私好みのイケメンでも見つけたのか…?不思議に思いながらも、恐る恐るドアノブに手を掛けた。

「う、うわあ…」

扉の中には。金銀財宝…じゃなくって、それぞれ違う系統の美形達。こりゃあ朋子の言うとおりだわ…。確かにこれは超絶美形イケメン軍団。

「カラフルですね…」

「そこ?まあそんなのどうでもいいのよ」

「そんなのってひどいのぉ」

「まあまあ仁王くん。なまえさん、お久しぶりです」

「あ!えっと、柳生くん、だよね?お久しぶり。結婚おめでとう」

「ありがとうございます」

「朋子をよろしくね。いい女なんだから逃がしちゃダメだよ」

「はい、もちろん逃しませんよ」

フワッと笑った柳生くん。朋子をちらりと見たら少し恥ずかしそうにしていた。いい旦那さんもらったじゃん。ほくほくしていると、イケメン軍団の影から、「俺の出番はまだかな?」と声が掛かった。全部で七人だと思ってたのにまだもう一人いたみたい。丁度彼を覆うようにイケメン達が立っていて気付かなかった。何のこと?と朋子に首を傾げると、ハッとした表情で私の視界を手のひらで遮られた。もちろん化粧が着かないように、ギリギリ触れないところで。

「えっ、えっ、何?」

「ごめんごめんなまえと比呂士が喋ってるの見て忘れてた」

「何で目隠しっ?」

「いいからいいから。スタンバイお願いしまーす」

スタンバイ?!何のスタンバイ?!不安になりながらジッと待つ。朋子にファンデーション付けるわけにいかないから下手に動くことはできない。人の動く音が暫くして、止まった。

「なまえ、心の準備して」

「えっ何の?!」

「深呼吸して、落ち着いてね」

「えっ何で」

「いいから深呼吸」

「はい…」

言われた通りに深呼吸をする。深く吸って、吐いて。朋子の手が退いて、ゆっくり目を開けるように言われた。そうっと瞼を持ち上げる。

「…」

「…」

「…」

「なまえ、どう?…って、え?!泣いた?!」

「う、ええ、な、なんでぇっ…?」

これは泣くよ、朋子。土下座して泣くって朋子が言ってたの、間違ってない。
目を開けた先にいたのは。あの日、眩い太陽に照らされていた…。

「ゆ、ゆきむらくんだあ…ふぇっ…」

「ふふ。はい、幸村精市です。初めまして、なまえちゃん?」

柔らかい藍色の髪を揺らして微笑う、幸村精市。彼が画面越しじゃなくて、今目の前にいて、私の名前を呼んでくれている。びっくりと嬉しいのと、ごっちゃになって崩壊した涙腺が止まらない。

「ひぇ、え、ん、はじめまして…ひっく、あのっ、あのっ、」

「うん」

「前にっ、テレビで試合みてっ…」

「うん」

「それでっ、それでっ、幸村くんっ…」

「うん」

「すきっ、すきですっ…」

「うん、ありがとう」

「わた、わたしもありがとっ…!うええ、どうしよ、ともこぉ…」

幸村くんと喋れて、ありがとうって言ってもらえて。パンクしそうな頭で朋子を見ると、困ったように笑っていた。

「いやあマジで泣くとは思ってなかったわ…」

「ごめん、だってぇ…」

「幸村くんに心臓奪われたんだっけ?」

「っん、うんっ、取られた…」

「嬉しい?」

「うんっ、嬉しいっ、ありがとぉ…」

渡されたハンカチで目元を抑えながらグスグス泣いていると、そろそろお時間ですよとスタッフの人が入ってきて、号泣している私に驚かれた。お化粧直ししましょう!と気を利かせてくれて、直してもらうことになった。朋子の大事な結婚式なのに私ばかり迷惑掛けちゃって…今度新居にお詫びを持って遊びに行こう。





ぞろぞろと男七人でゲスト用の控室へ移動しながら、今まで空気を読んでいてくれた仲間たちが口火を切った。

「いやー先輩さすがっすね」

「あんな熱烈な告白学生時代にもなかったんじゃなか?」

「そうだね…柳生に式を挙げたいからスケジュール教えてくれって言われた時はびっくりしたけど…」

「これなら納得だな」

「自分の式に友達へサプライズって普通ねーよな。柳生もいい嫁さんもらったぜ」

自分の彼氏の友達にプロテニスプレイヤーがいるって知った柳生の彼女がしたことはサインを頼むでも誰かに自慢するでもなく、友達に会ってやって欲しいっていう願い事だった。事前にもらった情報は、名前と、幸村くんのファンだからということだけ。そのなまえちゃんが柳生と喋るのを隠れて聞きながら、俺の出番を待って。いざ対面したなまえちゃんはどんなリアクションをするのかと思っていたら、彼女は目を真ん丸に見開いて、それから、泣いた。どうしよう、びっくり、嬉しい、って全身で表して。しゃくりあげながら俺に好きって伝えようとするなまえちゃんに心臓を掴まれた心地だった。

「あんなふうに言われたら、流石の精市も揺らいだんじゃないか?」

「そう思う?」

「ああ。それにタイプだろう、丸ごと」

涼し気な流し目を送ってくる柳には、どうして俺の好みを?なんて問いは愚問だ。





晴天に恵まれた青空の下で、朋子と柳生くんが愛を誓った。二人のキスはすごく綺麗で、見ていて照れるよりもホーッとしてしまった。私もいつかあんなふうに…なーんて、彼氏もいない私には遠い話だ。ブーケトスは朋子が私を呼んでくれたから、周りが見守ってくれて無事に私の手元へブーケが届いた。
食事も終えてそれぞれがデザートを食べたり話をしたり写真を撮ったりと自由な時間を過ごしていると、丁度一息ついていた私のところへ幸村くんがやってきた。隣いい?と聞かれてコクコクと頷く。あんなに子供みたいに泣いてしまったあとだから、ものすごく恥ずかしさがこみ上げてきた。

「素敵な式だったね」

「、ね、私もガーデンウェディングいいなあって思った」

「俺も。こんな自然に囲まれた中で愛を誓うってロマンチックだね」

「う、そんなこと言う幸村くんがロマンチックだよ」

「そう?俺ガーデニング好きだからさ、こういうのいいなって思って。……なまえちゃん?」

「な、何?」

「何でそんな俯いてるの?」

「だっ、だって幸村くん麗しすぎて…」

「そんなことないよ」

「それに、は、恥ずかしい…」

あんなに画面越しに見つめた幸村精市が私を見つめているのかと思うと。朋子が全身磨き上げてくれて、いつもより自信の持てる格好のはずなのに。

「二人とも楽しんでる?」

「と、朋子!」

「うん、楽しんでるよ。今日はご招待ありがとう」

「こちらこそ。なまえ、幸村くん堪能しなね〜。あっ、サインもらったら?」

「もっ、貰いたい!幸村くん、いいの?」

「ふふ、いいよ」

「ありがとう!色紙っ…ああ〜ユニフォーム持ってくればよかった…!」

「ユニフォーム?俺の?」

「うん、幸村くん着用モデルの…」

「買ってくれたんだ」

「うん、着るわけじゃないけど、幸村くん着てるの同じだって思ったらつい…」

「ありがとう。…そうだ、じゃあ、今度会う時に持っておいでよ」

「今度?朋子達の家来るの?」

「ううん、そうじゃなくて、俺と二人。嫌かな?」

「いっ、嫌じゃないけど…!」

ひええ、どういうこと?ちらっと横目で伺うと近くにいたはずの朋子が遠くで柳生くんのお友達と談笑していた。いつの間に!





「じゃっ、幸村くんよろしくね〜!」

なまえちゃんに(無理やり)デートを取り付けたあとも地道に会話を重ねて、どうにか照れながらもきちんと目を見て話してくれるようになった。二次会、三次会と続いてお酒が進む内にへにゃへにゃになったなまえちゃんは可愛いけどお酒飲ませるべきじゃないな、と少し惜しみながらも解散となったところで。あろうことか、朋子ちゃんが俺になまえちゃんを押しつけてきた。お持ち帰りしていいよ、って、この状態のなまえちゃんだと洒落にならないんだけど。他のみんなも楽しそうに「それじゃあまたな〜」「くっついたら教えて下さいよー」なんて言って帰って行く。残ったのは俺と、よくわかってない無防備な顔のなまえちゃん。

「なまえちゃん、住所言える?」

「ん〜?うん、えっと…えっと…?」

「…だめか…どうするかなあ…」

「ゆきむらくん、こまってる?」

「うーん少しね。なまえちゃんも帰れないと困るだろ?」

「なんで?」

「なんでって…」

「ともこが、ゆきむらくんがつれてってくれるからだいじょうぶって」

…きっとそれ、連れてってくれるの目的地が食い違ってる。朋子ちゃんも酔っ払いに何吹き込んでるんだか…。

「つれてってくれないの?」

うるんだ目と上気した頬で見上げるなまえちゃん。全く、どうしろっていうんだ。なまえちゃんと距離を縮めたいとは思ったものの、会った日にどうこうなったら俺が軽い奴みたいだ。でも、ずっと路上にいるわけにもいかない。…シングル二部屋、空いてるかな。





「わ〜ふかふか〜」

ある意味でうまくことが運びすぎている。頭の片隅で「既成事実も大事だぞ」と柳が言った。そんな無責任な。

「おふろはいるー?」
「いや、なまえちゃんは明日にしたほうがいいかな…」

入ったら溺れる、多分。

「えーと…はい、バスローブ。ドレス皺になっちゃうから着替えておいで」

「はあい」

素直にバスルームへ向かったなまえちゃんは、五分もかけずに舞い戻ってきた。非常に目に毒な格好で。

「っ、なまえちゃん?」

「ゆきむらくん、ぬげないよー…」

途中までしか下ろせなかったチャックは丁度下着のホックが見えるくらいで止まっていて、露わになった華奢な肩が白くて眩い。おろしてー、となまえちゃんが俺に背中を向けた。ふう…と深呼吸して、ジッパーに手を掛ける。ジジ、と下げていくと、「ひゃう!」と声が上がった。ひどい生殺しだ、これ。

「んん〜っ、くすぐったい」

「もうちょっと我慢して。…はい、いいよ。あ、ちょっと待っ…はあ」

恥じらいがスコーンとどこかに飛んでいるなまえちゃんがドレスをスポーンと脱いだ。もうだめだ、寝よう。さっさと眠ってしまおう。

「なまえちゃん、俺ソファで寝るからベッド使ってね」

「?ベッドつかわないの?」

「なまえちゃんが使っていいよ」

「いっしょじゃないの?」

なまえちゃんの眉がへにゃん、と下がった。いっしょがいいよお、と泣きそうな声で言われる。その表情に、声に誘われて唇を寄せた。ちゅう、となまえちゃんの唇を吸う。やわっこくて、たまらない。

「…こうなったら、困るだろ?」

もう寝よう、と頭をポンポン撫でてなまえちゃんに背を向けた。俺も着替えて、眠ってしまわないと。

「…なまえちゃん?」

ピン、と張ったジャケット。スーツの端をなまえちゃんが掴んだみたいで、足が縫いとめられる。

「いっしょにねよ」

「だから…」

「こまら、ない、からっ…」

「っ…」

「ゆきむらくんは、いや?」

背伸びをして、俺がしたのと同じように啄まれる唇。下着姿で、扇情的な表情で、こんなことされて。

「…いやじゃ、ないよ」

ごめんねなまえちゃん。もう止まってあげられないから。





「ん…」

けだるさを感じながら、僅かな眩しさに目が覚めた。もぞもぞ、と動いて二度寝しようとして、何か温かいものに触れる。…えっ?

「っ〜〜?!!!!」

恐る恐るそちらを向くと、朝日を浴びてまるで神に愛された天使みたいな顔で眠る幸村くんがいた。なんで?!慌てて布団の中を覗き込む。…着て、ない、何も。どうして…?二次会に出て、朋子にお酒勧められて…いつも飲まないけどお祝い事だからいいかって、それから…それから…。うわあああ、なんてことを…!

――なまえちゃんっ、気持ちいい…?

――き、もちいいよぉ、ゆきむらくんっ…

バッと頭に幸村くんの甘い声が思い出されて顔が一気に熱くなる。もう、もうお酒なんて飲まない…!

「うん…ん、あれ、朝…?」

「お、おはようございます…」

幸村くんがパチパチ瞬きをして、私に視線を定めた。

「あの、昨日はすいませんでした…」

「覚えてるんだ?」

「はい、あの、ほんとごめんね…?迷惑かからないように忘れる、し…サインの話ももういい、から…」

「え、なんで?」

何で、って。私が誘っちゃって、それで、それで、幸村くんに迷惑かけちゃって…それで何でもない顔してまた会えるほど面の皮厚くないし、メンタルも強くない。忘れないと。あんなに好きだったのに…。ああ、そうか。ファンとしてとかそういう括りなしに、ただ一人の私として、幸村精市という人に心を奪われていたんだ。気付いて、ぽろりと涙が零れた。

「ああ、泣かないで。もう…なんで大事なとこ覚えてないかな…」

「大事なとこ…?」

「なまえちゃん、今日の予定は?」

「え、何もない、けど…」

「そう。じゃあ、ゆっくり思い出せるね」

「へっ?…ええっ?」

くるりと、私に覆いかぶさった幸村くん。綺麗な顔なのにしっかりとついている筋肉が異性だということをアピールしていて、心臓が壊れそうなくらいに動く。

「もう忘れないように刻み込んであげるから」

真っ直ぐに幸村くんが私を見る。その強い眼差しに、芝生の輝くコートでボールを追っていた幸村くんがフラッシュバックした。画面越しに私の心臓を鷲掴んだ彼に今度は直接、隅々まで余すところなく奪われてしまうのだと悟った。

(amen/0913)

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