ふと目を覚ましたら隣になまえがいなかった。まだ寝てからそんなに時間は経ってないみたいだ。寝る前に時計を見た時から針が半周も回っていない。 なまえもそのうち戻ってくるかな。そう思って瞼を下ろしてみたけど、あれ?と違和感に気付いて体を起こした。 寝室を出てペタペタと廊下を歩く。リビングに続く扉を開けると、なまえが「あっ」と声を上げて驚いた顔をした。 「おはよう」 「う、ごめん、起こした?」 「いい匂いがしたからね」 そう。寝室に、微かに、夜中にするはずのない匂いが届いていた。近付くにつれて濃くはなっていたもののメニューまでわからなかった匂いの元をチラリと覗き込む。 「へえ、パスタ?」 「うん、急に食べたくなっちゃって…」 フライパンの中にはツナとキャベツが見える。そこへザルに開けた麺を投入して、ササッと混ぜて味を染み込ませていた。火を止めたなまえが、俺に振り返る。 「精市も食べる?」 「いいの?」 「うん、半分こでよければ」 「じゃあありがたく。おいしそうだからお腹空いちゃった」 「匂いすると食べたくなるよね。…よし、と」 小さめの白いボウルにパスタが盛られる。なまえがフライパンを洗っている間にパスタとフォークを運んだ。 「「いただきます」」 パスタフォークに麺を巻きつけてパクリと一口。 「おいしい。めんつゆ?」 「うん、めんつゆ。キャベツ入れないで、スープ多めにして大根おろし乗っけて海苔散らしても美味しいんだよ」 「へえ、大根おろしかあ…今度食べたいな」 「りょうかーい」 一人分を二人で分けたから、食べ終わるのが早い。ごちそうさまでしたをして、なまえの分も台所に運んだ。 「ふああ…」 「ふふ、片付けは明日にして寝よっか」 「うん、満足したら眠くなっちゃった…」 涙を拭うなまえとリビングを出て、今度こそ二人で布団に潜った。もう朝まで目は覚めないだろう。 (パスタが食べたくなった夜中に/140903) 茹で汁使うとおいしいです。ツナ缶まるごととにんにく炒めて、茹で汁好きな量入れて、めんつゆで味付け。麺投入して味染み込ませてできあがり。バター入れてもおいしい。私は手抜きでにんにくは炒めずにガーリックパウダーをドバっと入れるしキャベツはレンジです。 |