金曜 夜

――ラーメンが食べたい。

明日の部活に備えてそろそろ寝ようかと思っていた頃に、マナーモードにしてある携帯が震えた。チラッと通知を見るとなまえからだったからタップしてメール画面を開くと、ただその一言が書かれていた。…ラーメン?

――明後日ジャッカルの家でも行く?
――うーん、違うの、美味しいんだけど違うの
――どこのラーメン食べたいの?
――燕三条系って聞いたことある?

燕三条?初めて聞く名前で、どんな味なのか想像もつかない。燕三条系って何系なんだろう。

――知らない、どういうの?
――太麺で、背脂の浮いたスープで味濃いけどさっぱりめで、玉ねぎ乗ってるの

…夜中に想像するには胃が重くなるラーメンだなあ。ラーメンって言われて想像するメジャーなものとは少し違うみたいだ。

――長ネギはよくあるけど、たまねぎって珍しいね
――これが意外においしいんだよ。お母さんの実家帰るといつも食べに行くんだ
――…ってことは食べるの無理じゃない?確か県外だよね?
――食べれないから余計に食べたいの〜!一時間前くらいから急に食べたくなって、我慢できなくなってメールした
――メールで和らいだ?
――余計食べたくなった。道連れにする!
――えー?
――ラーメンラーメンラーメンラーメンラーメン…熱々のスープ…噛むと肉汁溢れるチャーシュー…食べごたえのある太麺…!
――やめて、俺までほんとにお腹空いてきた
――道連れ(*´ω`*)

「っ、」
何だもう、可愛いなあ。そこでその顔文字とかずるい。
そんなに言われると食べさせてあげたくなるけど、県外なんて連れてってあげられないし…。メールしながらブラウザを立ち上げて“燕三条系 ラーメン”で検索すると、普段こってりしたものをあまり食べない俺には胃もたれしそうなパッケージが出てきた。へえ、商品も出てるんだ。二人前か…。今注文すると到着は明後日の午前中、かな。

――明後日一時に俺の家でお昼。ラーメンはそれまでおあずけ
――え、ラーメン作ってくれるの?
――茹でるだけだから期待しないで待っててね
――精市が作ってくれるだけで嬉しい!楽しみにしてるね!

たまねぎはあったと思うし、チャーシューとメンマを明日の部活帰りに買って…どうせなら味玉も乗せようか。卵を茹でて味を漬けておくくらいなら、俺でも出来るだろう。なまえが喜んでくれる姿を想像すれば手間は大したことじゃない。メールを打ちながら、ぐう、とお腹が鳴った。

日曜 昼

「っう、わー!これこれ!すごい!たまねぎも乗ってる!え、どうしたの?!」
「ネットで売ってたんだよ。あとは見様見真似」
「うわー、うわー、ありがとう!食べていい?」
「うん、どうぞ」
「いただきます!」
「…」
「…うまー!これだよこれ!これ食べたかった!」
「ふふ、よかった」
「精市も食べて食べて!」
「そうだね、いただきます」
「…」
「…ん、おいしい。見た目の割にさっぱり?」
「そうそう、癖になるの」
「これ玉ねぎがいいね。ラーメンは長ネギって思ってたけどおいしい」
「(*´ω`*)」
「(*´ω`*)?」
「精市がわざわざ作ってくれて、精市も私の好きなの気に入ってくれて嬉しい」
「俺もなまえが喜んでくれて、なまえの好きなもの知れて嬉しいよ」
「(*´ω`*)」
「(*´ω`*)」

(ラーメンが食べたくなった夜中に/1408004)

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