このまま溶けてしまえばいいのにと、この人と触れ合っている時に、いつも頭を掠める。
休日、幸村くん宅。ソファに腰掛けてのんびりとテレビを見ていた。隣り合ってくっついていた私の右手と幸村くんの左手をもっと近付けようと、指と指を絡めて繋いでみる。幸村くんはされるがままにしてくれて、小さく笑っている。その柔らかな声も、ぎゅってすると同じように返してくれる温かさも、全部全部愛おしい。このままくっついて離れなくなってしまえばいいのに。繋がれた手を持ち上げてじいっと見つめていると、幸村くんが、どうしたの、と聞いた。
「テレビ飽きた?他のことする?」
「んー、ううん、違くて、くっつけばいいのになーって」
「くっつきたいの?」
「うん」
間髪入れずに即答すると、幸村くんは仕方なさそうに、嬉しそうに、眉尻を下げて笑った。おいで、って膝をポンポン叩かれる。手を離すか少し悩んで、誘惑に負けてそっと力を抜いた。幸村くんの膝に上がってぎゅうっとしがみつく。首筋に顔を埋めると、幸村くんのやわらかい髪の毛が頬をくすぐった。シャンプーや柔軟剤、全部ひっくるめた幸村くんの匂いに包まれる。たまらなくなって頭をグリグリ首筋に押し付けると幸村くんの笑い声が上がった。背中に回された手でとんとん、とあやすように撫でられる。
「どうしたの、甘えん坊さん」
「うー、幸村くーん…」
「なあに」
「すき、だいすき、溶けちゃいたい」
「お誘い?」
「違う、くはないけど、うう…」
「ふふ、ごめんね、わかってるよ。こっち向いて」
促されて、押し付けていた頭を上げた。いつもと逆で、幸村くんが私を見上げている。後頭部に幸村くんの手のひらが当てられて、コツン、とおでこと鼻がくっついた。そのまま髪の毛を梳いてくれる手が優しくて気持ちいい。
「俺たちは別々にできてるからこうやって好きになってくっつけるんだよ。一つになっちゃったらこんなことできないし、喋れない。そしたら寂しくない?」
「寂しい、けど、溶けちゃったら離れなくていいもん」
「本当に甘えん坊だなあ…」
「本当に好きなんだもん…」
近すぎて見えないけど、きっと困ったように笑ってるんだろうなと思う。喋る度に届く吐息がくすぐったい。
「俺も好きだよ。だからお前を離しなんかしないよ」
「本当?」
「本当」
「…すき」
はいはいって言いたげに優しく微笑んだ幸村くんの返事は、優しい愛しいキスだった。


(すきすきだいすき幸村くん/140727)

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