※性描写のあるお話です ※十八歳未満の方、苦手な方は閲覧を控えてください 「だめ、いざや、だめ」 一言ずつ区切って、赤ん坊に言い聞かせるようにゆっくりと喋った。 「俺もだめ。いいでしょ?」 「よくない!」 良いわけがなかった。何が良くないかって、まず部屋割りが失敗だった。空いてる部屋に寝てもらおうと思ったところを、「ねえ俺なまえの部屋でいいでしょ?寂しいし、ねえ」なんて言われて、素直に承諾してしまったのがまずかったのだ、今思えば。寂しいとかいい歳して言ってるんじゃねーよと押し通していれば、こんな状態になることはなかった、はず。それとも、「布団?いらないよ別に、一緒でいいじゃん」と言われたことにも「確かにいつも一緒だし今更かあ」なんて答えたのも良くなかったのかもしれない。 「ね、おねがい」 耳元で言われてしまったらもう、押し返していた手を緩めるしかなかった。こいつは自分の長所を良く分かっている。はあ…とわざとらしく溜息を吐くと臨也はふふんと笑った。わたし達が何を言い合っていたかというと、所謂、恋人達の営みというものをするかしないか、だった。同じベッドで寝ることだって、そんなことはしない前提だったから呑んだというのに、お客様である臨也より遅くお風呂から上がって化粧水を染み込ませていたらマウントポジションを取られてしまった。わたしが「全部臨也が初めて」だと、今思えば発熱して叫びそうなくらい恥ずかしいことを言ってしまったのが原因なのだと言う。すぐにキスしたくせして、それで発散できなかったのか。ちなみにそのお母さんに見つかってしまったキスによって恥ずかしさで中々家に入れなかったのだが、臨也に背中を押されて渋々玄関を潜ったのだった。お母さんに対して、急に臨也を連れてきてしまって悪かったという後ろめたさもあったのだけれど、「良い男捕まえたわね!」とものすごく褒められてどうでもよくなってしまった。収入も目が飛び出るくらい良いのだと教えると早く結婚しろと耳打ちされた。獲物を逃がすなってか。だけどお母さん、今はわたしが獲物のようだよ、なんて笑えない冗談を脳内でかましながら、悔し紛れに、降ってきた唇をがぶと少し痛いくらいに噛んだ。全く、人の実家でコトに及ぶなんて、常識がなってないよ、って言ったところで聞きはしないんだろうなあ。 「なに、甘噛み?やっぱり乗り気なんだ」 わたしの思ってることなんてわかってるくせして臨也はそんなことを言う。睨んだって「誘ってる?」だとか言われるのが目に見えていたから視線を外して横を向いた。望んだ反応じゃなかったようでムッとしたのか、無言のままパジャマの中に手を入れられ、腹を伝ってブラジャーの下の、色付いている部分を手探りでぎゅうと摘まれた。突然のことで声を抑えるのも忘れて母音が漏れる。 「声、抑えなきゃだめでしょう」 自分でしたくせに!「いざや!」って怒ろうとしたら今度はさっきの刺激に加えてもう片側を食べられ、急いで口を閉じたけど「いざっ…ひゃあん」なんて言ってしまった。恥ずかしくて私の胸を舐めたり、噛んだり、そんないやらしいことをされているところはとても見れないから実際には臨也の顔なんてわからないけど、絶対楽しそうな顔をしてるんだろうなとわかった。こういうときは、遠回りに優しくて甘やかしてくる普段の臨也はどこへやら、わたしにいじわるをするのが好きな臨也になってしまうのだ。 じわじわと少しずつ、いやらしい液が自分から分泌されているのがわかった。散々、小さくも大きくもない(できればもっと大きくなりたい)胸をいじられて、ショーツ大変なことになってるだろうなと思った頃に、胸から臨也の頭が離れて、ズボンの上からそろーりと触られた。唾液が付いたままの先端は冷たくなっていく。 「はは、パジャマ越しでも湿ってるのわかるよ」 だから臨也のせいだってば!そう思ったけどさっきので学んだので、今度は怒ろうとはせずに、不意打ちが来ても耐えられるように口を固く閉じた。二枚も布を通しているというのに、不本意ながら蓄積された欲望がそれだけの刺激も大きく感じ取って、立てた膝がぶるりと震えた。何度もそのまま撫ぜられて、音を耐えた息が絶え間なく吐き出されるようになってからやっと脱がされる。また臨也の笑う声がした。どうせ目も当てられないくらいに濡れちゃってるんだろうとわかってはいたものの、見られているのだと思うとひどく恥ずかしい。 「触っていーい?」 「今更で、しょ、ぁ、」 ぴちゃり。わざと音を立てて辺りを撫でられる。膨らんでしまった芽に当たる度に足がびくびくと震える。もうやだ、気持ちいいのにまだ続くなんて!既に声を抑えるのが辛くて、あ、あ、と小さく漏れてしまっている。 「も、いいよう、はやくして」 集中的に秘芽を撫で出した腕を掴んで止めると、まだ慣らしてないから駄目でしょって却下された。でも眉間が少し寄っていたから、もしかしたら臨也も辛いのかもしれない。 「じゃあはやく、して、ゆび、ちょうだい」 「…今日は随分積極的だね?声抑えるの興奮する?」 「そっ、んなことないばかぁ、ん、いいからっ」 「はいはい。いれるよ、」 「うん…はぁ、んっ…!」 ゆっくりと根本まで入ってくる。それを抜いて、今度は二本また奥まで入ったらぐるりと掻き回されて、咄嗟に口元へ手のひらをやった。段々と動きが早くなる。さっき撫でられていた時の音と比じゃないくらいにいやらしい音がする。声だけじゃなくてもしかしたら水音まで聞こえちゃうんじゃないかと心配になってしまうほど、頭の中にこだまする。「一回イっちゃう?」と臨也に聞かれたけど、ぶんぶんと頭を横に振った。イったあとに入れられちゃったりしたらきっとおかしくなってしまう。声を我慢するとか、それどころじゃ済まない。 「ちょうだい、いざやの、わたしに」 やっぱり今日のわたしは少し変かもしれない。いつもはそんなに恥ずかしいこと言ったりしないのに。認めたくないけど臨也の言ったとおり、この状況に興奮していたのだろうか。息を整えながら侵入を待っていると臨也は上体を起こしてしまった。それからわたしも起こされる。 「ベッドだと響いちゃうから、床で、ね。なまえ下だと背中痛いだろうから、上になってくれる?」 上。普段なら絶対しない。でも、音でバレないために。それにわたしを一応気遣ってくれているから。…なんて言ってみたところで、そんなのは言い訳にすぎない。わたしの体は正直だ。早く終わらせたいとうずいている。 「わかった」 先に床に下りた臨也がベルトを緩めて一物を取り出す。そういえばゴムは?と片隅で考えるが目の前でポケットから出てきて装着された。何でそんなとこに忍ばせてあるの。 「おいで」 その声で余計に潤ってしまったことは恥ずかしくて言えない。わたしもベッドから下りて臨也に跨った。顔を見ながら入れたりしたらすぐにイってしまいそうだったから、俯いて胸辺りを見たまま腰を下ろした。臨也がソレを支えてくれていたから逸れずにぬるりと入ってくる。背筋から全身に震えが広がっていく。全部収めてペタンと足をつく頃には息も絶え絶えだったが、下から軽く揺すって催促され、仕方なく腰を上げた。引いてまた戻すだけでどうしようもない気持ちよさに襲われる。力が抜けてゆっくりとしか動くことができない。 「はあっ、なまえ、焦らしてるっ、の?」 「ちがぁ、う、よおっ…きもち、くて、もうできな…」 「っ、かわい……こっち向いて」 優しい声で言われて、顔を向けると角度をずらした臨也の唇がわたしの口を塞いだ。開いていた唇に舌が入ってくるのと同じに、臨也が下から突き始めた。さっきよりもずっと力強い突き上げに溢れる嬌声は全部吸い込まれて、外には篭もった小さい音しか漏れない。絡み合う舌に、狭まる間隔に、頭はスパーク寸前だった。きっとチカチカするってこういうことを言うんだ。 「ん ぁっ、ぁ、む、ぁあっ…!」 「う、ぁ…ごめ ん、もうちょっと」 達してしまった膣を尚ガツガツと抉られる。だめ、だめ、だめ!臨也の肩に置いていた手を離して、今にも大声をあげてしまいそうな口を両手で必死に塞いだ。目尻からポロッと涙が零れる。セックスをしていて泣いてしまうのは処女をあげたとき以来かもしれない。あ、だめ、またイったゃう…!ぶるりと震えた体をしっかりと抱き締められて、もう一突きされてから動きが止まった。耳元で臨也が小さく喘ぎながら、ゴム越しに吐き出していた。 「はっ…はっ…泣かせちゃったね、ごめん」 「やりすぎだよばかいざや…」 「ほんとにごめん。でもすごい可愛かった」 「うるさいざや…」 「またそれか」 掠れた声で笑う臨也の肩に頭を置いたら一気にだるさと眠気がやってきた。寝てしまいたい、けど、まだ入ったままだし、ちゃんと服着ないと、明日お母さんに見られちゃう…。必死に瞬きをしていると、気付いた臨也が髪の毛を梳くように優しく撫でた。余計にうとうとしてしまう。 「いいよ、あとはやっておくからおやすみ」 「ほんとう…?」 「うん、ほんとう。おつかれさま」 「うん…」 「ね、」 「うん…?」 「明日さ、連れてってよ。なまえの育ったところ。俺に見せてね」 見せるよ、いっぱい、わたしが育ったここを。田舎だけど、電車なんて一時間に一本だけど、とても素敵なところなんだよ。おやすみ、という声を遠くに聞きながら、臨也を置いてこようとする心配なんていらなかったんだとわかった。 one's one and only/後編 |