愛しいなあ愛しいなあ。折原を見て〜(十行くらい)
「愛しいなあ」
折原が割入ってきた。といっても私が勝手にそう頭の中で唱えていただけで口には出していなかったんだから、折原からしたらはた迷惑もいいところだ。折原は見下したような、蔑んだような、それでいて熱を孕んだ目で下校する人々を追っていた。
「愛しいなあ」
「ふうん」
「ふうんって、君。別に返事は期待してなかったけど、どうせならもう少し反応してよ。せっかく待っててあげてるのに」
別に待っててなんて頼んでないんだけど。とは思っても言わない。可愛くはなれなくても可愛くなくはなりたくなかった。今日の反省という欄に、特に。とだけ書いて日誌を閉じた。何も書いてない人もいたし咎められることはないだろう。教務室に届けるのは面倒だから明日の朝担任に渡そう。
「終わった?」
「うん。有難う」
「…変なところで素直だよね、君って」
「普通に素直でしょうが」
「えーないない」
筆箱をリュックに入れて担ぐ。白いふわふわの可愛いリュックだ。一目惚れしたというのもあるが、少しお高めだったこのリュックを購入するに至った一番の理由は、折原と帰る途中に見かけたからだった。少し特別な気がして、余計に愛着がある。
「今日はシズちゃんさんとかみんなとデートしなくていいの?」
「そうだったらここにはいないだろうねえ」
「そうだけど、楽しそうに窓の外見てたから」
「何、やきもち?かわいーねえ」
「折原はナルシストだなあ」
何て言う私は素直じゃないなあ。折原は間違っていない。シズちゃんさんみたいに思われるのはちょっと、いやすごく嫌だけど、愚かしく愛しいと思われる人々が羨ましかった。あんな瞳で眺められる彼らに多分、私は嫉妬している。愚かだ、馬鹿だと思われることに快感を感じる変態なんかではないけど、そこには少なからず愛が内包されていた。いいなあ、と折原が愛おしそうにする度思う。たくさんある中のたった一つになるのはきっと寂しいけど、この立ち位置じゃ愛はもらえない。ただのご近所さんか、クラスメイトか、暇つぶしか、エトセトラ。
「愛しいなあ」
その言葉を私にくれたらいいのになあ。



という感じのを書き直せたら上げたい。両片思いかわいい。この日記臨也さんのことばっかり言ってて気持ち悪かったから自重しようと思ったけどやっぱり格好良いから仕方がない。


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