◎豪吹G
気に入らない…。
「豪炎寺くん、よかったらあたしたちとご飯たべない?」
気に入らない…。
「豪炎寺くんってかっこいいよねー。私に彼氏がいなかったら落ちてたわ//」
気に入らない!
「吹雪、帰るぞ。」
「…うん。」
いつも僕を席まで迎えに来てくれるのは放課後、帰る時くらい。それ以外は取り巻きに囲まれながらいつも本を読んでる。
確かに豪炎寺くんはかっこいいよ?それに優しいし、クールだし、そんな人に好かれたくなる気持ちも痛いくらいわかる。
豪炎寺だって浮気するつもりがないのだって分かってる。好きで騒ぎ立てられてる訳じゃないってことも。
でも…、僕としてはもうちょっと一緒にいたいって言うか、イチャイチャしたいって言うか…。
傍に行く勇気がないのは僕の方なんだけどね…
「ねぇ豪炎寺くん。」
「ん?」
「…キスして。」
帰り道、やっぱり甘えたくなって豪炎寺くんの制服の裾をちょいちょいと引っ張ってみたら、驚いた顔をしていたけど直ぐに僕の手を引いて近所の公園に入った。
「…んん……」
豪炎寺くんは僕と自分のカバンを下に落とすと、木に僕を押し付けるように少し強めのキスをくれた。
「…ん、……!っぁ…クチュ」
「……チュプ…ッチュ…」
息を吸おうと少し口を開いたら舌が入ってきちゃった。びっくりして豪炎寺くんの胸を押すけど、腰に腕を回されてさっきよりも身体が密着する。
「…んんっ…はぁ…っん!」
でも、何だろう…
触れるだけで良かったのに、まるでこうされるのが分かっていたような…。
「…チュ……っはぁ、はぁ」
「…はぁ…吹雪、もっと舌入れて」
「…ん…っ…」
離れては、くっついて、まるで磁石みたいに引き寄せられる。押していた腕を首に回すとさっきより身体が密着する。
「……クチュ…チュパ…っふはぁ」
「…っはぁ、…大丈夫か?」
「ぅん…はぁ…はぁぅ…//」
感情に乗せられるがままにしちゃったものの、自分から誘っちゃった事が急に恥ずかしくなってきた…。
火照った顔を肩に埋めて隠す。
髪を撫でてくれる掌がきもちいい…。
――――――……
「豪炎寺くん、学校だと全然話してくれないんだもん。」
「そうか?」
「そうだよ!」
二人でひとつずつブランコに座りながら話す。僕一人で考え込んでも悪い方に行くばっかりだもんね。
「…だから、学校ではあんまり僕と会いたくないんじゃないかって。」
「そんな訳ないだろっ」
「……じゃあ、なんで…」
すぐに否定が返ってきて安心したけど、、それだけじゃ僕は負に落ちなかった。内心ドキドキしながら聞いてみた。
「…その、…この世界では、俺と吹雪のような関係はあまり知られて良いようなものじゃないんだろ?」
「…え?」
「俺は公の場でも吹雪が好きだと言える。でもそれは俺だけが思っているだけで………。吹雪が批難されるのは嫌なんだ。」
考えていたのとは違う答えに頭が冷えていくのがわかった。
てっきり単にそういう関係がバレるのが嫌なんだと思ってたけど、豪炎寺くんは僕のことまで…。
「…ごめんね。」
「どうして謝る?」
「だって。僕、自分の事しか考えてなかった。…豪炎寺くんはちゃんと考えてくれてたのに。」
なんだか情けないな…
豪炎寺くんの方がずっと僕のこと大切に想ってくれてたんだ。
「いや、俺の方こそ悪かった。お前といると、…その…、あの、」
「なに?」
「だから、…つい手を出してしまいそうになるんだ。」
「え//」
「吹雪が可愛いから。」
「………///」
思わず豪炎寺くんの顔を見ちゃったけど失敗だった、少し照れながらも真剣な目に捕らわれる。
「寂しい思いをさせて悪かった。」
「…ううん。」
もう昼間みたいな感情はない。こんな風に気持ちを聞くことが出来てよかった。
「じゃあ明日から学校でも一緒にいてね。」
「いいのか?」
「もちろんだよ。…話、聞いてくれてありがとう。」
「いや、二人の事だ。これからも何かあったら二人で話そうな。」
「うん!」
僕がなかなか行けなかった勇気はなくなった。これも豪炎寺くんのおかげ。やっぱり話してみるもんだ。二人でなら、ちゃんと解り合える。
はぁ。なんだか全部リードしてもらってる。僕も豪炎寺くんがくれる想いを返したいなぁ…。
まぁ、何はともあれ僕のモヤモヤは解消された。
あー、よかったぁ。明日からイチャイチャ、とまではいけないけど二人でいれる!
「…帰ろっか。」
ひょいっと降りた反動で少しだけブランコが揺れた。
……………?
豪炎寺くんの反応がないから振り返ってみれば揺れているブランコを見ていた。
「どうしたの?」
「………さっきから気になってたんだが、なんで人間はこんな不安定な椅子を作るんだ?」
「へ?」
「あそこにある椅子は動かないだろ。どうしてわざわざ鎖で鉄に繋いでいるんだ?」
豪炎寺くんが指差した方にはベンチがあって…。
え、よく分からないけどもしかして
「…ブランコ、乗ったことないの?」
「ブランコ?ないな。見たことない。…遊園地にあるのか?」
いや、いま乗ってるんだけど…。
あ、いい事思い付いた。
「ブランコはね、すごく楽しいんだよ。」
物知りっぽくて意外と世間知らずな所が面白くて、からかいたくなっちゃった。
「僕が背中押してあげるね!」
「え、…おぃ…吹雪、危ない!落ちる!」
「ちゃんと捕まってないと落ちるよー」
初めて乗るものにわーわー騒ぐ豪炎寺くんを見るのは新鮮で楽しかった。
けどおかげで豪炎寺くんはブランコが苦手になったみたいで、帰りに公園によるときは絶対ベンチに座るようになった。
ブランコが苦手なんて子供みたいでかわいいよね。僕のせいだけどさ…。