◎豪吹F
久しぶりに学校に行ってみたら、豪炎寺くんは相変わらずきゃーきゃー黄色い声を立てられていた。そりゃもうファンクラブができちゃうくらい。
そう言うのを見てると、本当に人気があるんだなーと自分の立場と比較してちょっと寂しく思ったりもする。
「吹雪くん、昨日までのノート見せてあげるよ。」
「いいの?ありがとう。」
近くの席の子に声をかけられた。そうだ、僕はこのくらいの距離感で十分なんだ。
そう言えば今日は告白してから何だかんだ初めての学校だったんだ。でも、どんな甘い学校生活が待っているかと思えば、豪炎寺くんの回りにはいつもファンクラブの親衛隊やキラキラに分類される男女がいるからなかなか近づけない。
彼を単品で見れるのは授業中くらいだ。
「じゃあこの問題、豪炎寺。」
数学の問題を当てられて、前に出て黒板にすらすらと答えを書く姿に目を奪われる。
やっぱりかっこいいな…なんて//
こんな初々しい事を考えるなんて、なんだか片想いの頃に戻ったみたいだ。最近濃い時間を過ごしていたから初心を忘れかけてた。うん、彼は人気者なんだから、しょうがないよね…。
でも、ちょっとくらい構ってくれてもいいのに。
登校は一緒だったけど、結局放課後まで一言も話せなかった。
「吹雪、帰るぞ。」
「………うん。」
僕はちょっと機嫌が悪かった。
「今日、家来るか?」
「……今日は、いいや。」
せっかくのお誘いも何だか乗り気がしなかった。
授業中はあんなにトキめいていたのに…。
「そうか…。」
はぁ。僕ってこんな落ち込みやすいタイプだったっけ…?
恋は叶ってからが大変って近くの席の女の子が言ってたけど、全くその通りだ。
片想いほどポジティブな時期はないと思う。
豪炎寺くんは僕を家まで送るって行ってくれたけど、途中までで遠慮した。これ以上一緒にいたら、どんどん心が辛くなっていきそうで…
「じゃあ、また明日」
「またね。」
近所の公園の前でお別れ。
今日の朝まであんなにイチャイチャして熱かったのに、いきなり氷河期が訪れたみたいだ。
だって豪炎寺くん人気者過ぎるんだもん。僕と生きてる世界が違いすぎて…。
もちろん豪炎寺くんを好きな事にかわりはないけど、
僕上手くやっていく自信がない…
どうやったらあんなキラキラした人たちになれるんだろう。