◎豪吹C
「けほっ…けほっ」
「大丈夫か?」
「うん…。」
豪炎寺くんの手料理を食べて片付けをしてソファーでくつろいでいたら、だんだん調子が悪くなってきた。
「風邪か…?」
「ごほっ…そうかも、ちょっと寒いし。」
ぴとッと豪炎寺くんの手がおでこに添えられる。僕より少しひんやりしてて、人間ひえピタみたい…。あ、人間じゃなかった。
「少し高いな…。とりあえず俺のジャージ着てろ。」
「うん、ありがとー…。」
豪炎寺くんはソファーの背もたれににかけてあったジャージを僕にかけて、キッチンで何か作り始めた。
「甘い香りがする…。」
「ああ。……ほら、熱いから気を付けろよ。」
戻ってきた豪炎寺くんからそっと差し出されたカップには、暖かいココアが入っていた。
「ありがとう。」
コクッと一口飲む。
甘くて、でもしつこくない。喉に優しい感じの…。
「妹が風邪を引いたときに、よく作るんだ。」
…妹がいるんだ。
ココアに映る自分の頭から耳らしきものが生えているのが何となく見える。
「案外効きそうだろ?」
「…うん。あったかいね…。」
美味しさだけじゃなくて、思いやりも詰まってる。
「ふふ……僕にも家族がいたら、作ってもらってたかもね。」
ただ単に思ったことをサラッと口に出したつもりだったけど、
「……え。」
豪炎寺くんがあんまり悲しそうな顔するから
「べ、別にそんな気にする事じゃないよっ…もう結構前の話だし、今は割りきれてるんだ。」
嘘をついた。
「そうか…。」
それでも浮かない表情の豪炎寺くんに微笑んでみせると少しは表情が柔らかくなった。