豪吹


夕食が終わって風呂に入って、後は寝るだけのフリータイムになる。

11時を過ぎた頃、勉強に区切りがついたところでベッドにうつ伏せになって鬼道から借りたプロのサッカー雑誌を読んでいた。

それから少したって
コンコン、と控えめなノックの音が聞こえた。

来たな……。

「どうぞ。」

声だけで返事をする。
相手はだいたい分かってる。

「豪炎寺くん…。」

ドアの向こうに立っていたのは、思った通り吹雪だった。

「今、いい…?」
「あぁ。もちろん。」
「よかった…!」

もう半分寝ぼけたような声色でテクテク部屋の中に入ってくると、うつ伏せになっている俺の上によいしょっと乗ってきた。この甘えん坊め。

重くないが、吹雪の身体と密着していることで、何て言うかムラムラくるっていうか…

「なに読んでるの?」
「この前鬼道から借りたやつだ。この辺とか、次の試合に役立ちそうじゃないか?」
「へぇ、このくらいなら僕でもいけそう。あ、これとか今度練習してみたいな。」
「そうだな…これなら俺じゃなくて鬼道にボールを持たせて…」

パラパラとページを捲ってはサッカー談義をする。
気がつけば12時を過ぎていた。

「明日に響くと悪い、寝るか。」

身体を反転させようと動こうとしたが、吹雪は俺の肩甲骨辺りに頭を置いて何やら考えていてどかない。

「…んー…。」
「吹雪?」
「やだ。」
「…え……いや、おりないと俺が寝れない。」
「豪炎寺くんの背中気持ち良いんだもん。」

気持ち良いって……。
喜べばいいのかよく分からない。

にしても…
俺の身体を跨いでいる吹雪の柔らかい太ももが俺の太ももと密着していて、呼吸するたびに擦れて結構キツイ。
今すぐにでも反転させて吸い付きたい。


「ふ、吹雪。おりてくれ。」

よからぬ妄想を振り払い吹雪をおろそうとするも…

「やだ。」

吹雪は俺の首に手を回してさらにくっついてくる。最近ご無沙汰だった分いまの状況は誘っているとしか思えなくなってくる…。

「………ったく」

このままでは危ないと無理矢理体勢を変え、仰向けになった。
吹雪の腰に手をそえる。

「んー、背中よかったのにぃ…。」

吹雪は俺の上でゴニョゴニョ言い始めた。

「こっちは、ダメなのか?」

少し下がった所にある吹雪の顔をそっと持ち上げてついばむようなキスを贈れば、えへへ、と笑顔を見せる。

「ううん、こっちの方が好き。」
「よかった。」

今度は吹雪から唇が重なる。
キスをしながら手を回してゆっくり身体を入れ換える。

「んん…クチュ…」
「……ん。」

舌を射し込めば従順に返してくる。

かわいい…。

実は今日みたいに甘えてくる日は珍しい。
最近ちょっとしたワガママを言うようになってきたのも、俺に心を開いてきてくれていると思うといとおしい…。

「っふぁ……。はぁ…。」
「…はぁ……。」

吹雪を腕に包んだまま横になると、俺の胸に頬擦りしてきて猫みたいだ。

「……寝るか。」
「……うん。…ふふ…おやすみぃ。」
「あぁ、おやすみ。」

額にちゅっとキスをすると安心したように身体の力を抜いたのが分かった。

少しするとスヤスヤと安らかな寝息が聞こえてくる。
今日、吹雪に何があったのかは分からない。でもそれを俺が癒せたならそれはすごく幸せな事だと思う。
吹雪は寂しがり屋だから、起きたときには必ず傍にいてやりたい。

俺だって吹雪から目には見えないたくさんの事をもらっている。些細な事でも吹雪がいることでこんなに愛しく思える事ができる。


ふわふわの髪を撫でながら髪に鼻をつけると俺の身体の力が抜けるのを感じた。

そうだな。
普段伝えきれていないけど

好きだ。吹雪。








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