「おい。吹雪。」

放課後。帰ろうと靴を履き替えた時、後ろから呼ばれた。

振り替えると
朝余計なことをしてくれた人だ。どうせ説教か何か言いに来たんだろ。返事もせず歩き出した。


「おい、待てって。」

ちょっと遅れて彼が後ろからついてくる。最初だけだと思ったら駅まで来た。これ以上ついて家にまで来たら大変だ

しょうがない…。

僕は振り替えって

「話しかけないでくれるかな。名前も気安く呼ばないで。僕、君のこと知らないし。」

冷たく返した。大抵の人はこれでもう近寄ってこない。目の前の彼もそうだと思った。

でも違った。
気分を害したような顔もせず

「あぁ。すまん。だがケガの手当てくらいしろ。酷い顔だぞ、親が心配する…。」

僕の心配をしてきた。変な人。事情をしってか、先生でさえもそんな事言ってこないのに。
っていうか、親なんていないよ。

「いいよ別に。」

もう関わりたくない。ただ殴ったり蹴ったりストレスをぶつける人よりも、こういうタイプはやっかいだ。

背を向け改札に歩き出す。
でもまた彼は、引き留めるために僕の腕を掴んだ。

ほんとしつこい!
思わず声を荒げる。

「もう、なんなんだよ!もう構わないでよ」

バッと手を振りほどく。
こんなにしつこい人は初めてだ。
彼はびっくりしたような顔をしていた。僕がこんなに拒否しないと思ってたのかな。なら大きな間違いだよ。

今度こそ帰るだろう。
そう思ったのに

「そんなに大きな声が出せるんだな。」

「…!」

しまった、と思った。感情を表にするつもりじゃなかったのに…
どうしたらいいか分からなくて目をそらす。



すると
その隙を狙っていたかのように、


ちゅっ

「!?」

なに!?
バッと彼の方を見るとドヤ顔で、

「消毒のかわりだ。家に帰ったらちゃんと手当てしろよ。」

そう言い残し彼は背を向け帰っていった。

「は!?」


殴られた時にできた口元の切り傷にキスされた。今までおとなしくしていた痛みがジンッと返ってくる。


やっといなくなったと思ったのに、最後の最後でとんでもない爆弾を落としていった。


ショックと、あまりにも突然の事件過ぎて、僕はその場にしばらく立ち尽くした。


男に、しかもあんなやつにキスされるなんて…
最悪、最悪!

あんなやつ大っ嫌いだ!



でも不思議と、傷の治りが普段より良かったのは彼のお陰なのかと思ってしまう。


今度会ったら文句言ってやろう…。


僕はまだ、新しく芽生えたこの気持ちに気づいていない。



だいきらい。完


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