09


言っちゃった…。

もう豪炎寺くんと一緒にはいられないし、これから嫌いな"フリ"をしなきゃいけない。
今のだって絶対豪炎寺くんを傷つけた。今まで何度も声かけてくれてるのに、僕は突き放すような態度を取って…
僕って最低な人だ。

でもね、君に、いや皆をこんな事に巻き込みたくないんだ。

「わかったでしょ…?は、早く部屋に戻りなよ。」

僕は突き放すとヨロッと立ち上がった。
ごめんね。

これで終わり。そう思ってたのに

「言いたいのはそれだけか。」

「え……?」

豪炎寺くんも立ち上がると、僕が逃げないように二の腕を掴んできた。

「お前はそうやって人を避けて、自分だけで何とかしようとして、誰かに迷惑をかけなければそれでいいなんて思ってるのか!」

真を貫く言葉だった。
僕は皆に迷惑かけたくないだけなのに…

「ちがう…違うよ!」

僕だって考えたんだ。

「皆を巻き込みたくないから!僕が今までどんなことされてきたか知らないくせに!」

思わず声を荒らしてしまう。あいつらが聞いてたら大変だ。豪炎寺くんは何も悪くないのに、言い始めた口は止まらない
バッと腕を振りほどく。

「僕だって言いたかったさ!だけど皆を巻き込みたくなかったから!皆が好きだから!」

目から暖かい何かが溢れて声が震える。
もう自分でも何言ってるのか分からない。こんな僕を君は軽蔑するだろう。
目眩が酷くなってきた。ここで倒れたら、君は僕を置いて帰るんだろうか…。

「君にこんな事言いたくないのに!本当は君に嫌われたくないよっ、でも、でも僕そうしないと…!?」

「守るよ。」

気がつけば、ふわっと腕が回されていた。

「…な、何言って。」

振りほこうと身体を捩るけどしっかり力が入っていて動けない。
これ以上近づかれたら、僕の築いてきた何かが壊れてしまうような気がした。

「は、離してよ!これ以上僕に近づかないでよっ」

ひくっと喉がなる。
これは涙じゃないよ。
だって悲しくないもん。

「吹雪。俺が守るから。」

「やめてよ…。」

もう僕はいつしか抵抗を止めていた。
辛い…。
君に優しくされると辛いんだよ…。

「吹雪。お前は、もうひとりじゃないんだろ。」

「…うん。」

豪炎寺くんは僕の肩をそっと掴んで、瞳を見て

「だったら…、俺にもそれを分けてくれないか?」

「!…うん、……ひぅ…っひく…。」

その言葉に"僕"は自分で自分を囲っていた檻から解放された。
もう一度、優しく抱きしめられた時に流れたそれは涙だった。
僕にはこんなに素晴らしい人がいたのに、気づけなかった…。
いつでも手を差しのべていたのに、見ないふりをしていた自分が悲しくて

小雨が降りだしたのにも気づかずに、暖かい腕の中で僕は声を出して泣いていた。





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