04

夕飯の時間になって、俺が連れていったこともあり吹雪を呼びに行った。
医務室に入るとちゃんと横になって寝ていが、少しうなされていて眉間にシワがよって汗もかいている。さっきは言い過ぎたかもしれない、と寝顔を見て思ってしまった。


「吹雪。吹雪」

起こそうと肩を掴んだとき、指先にヌルッとした感覚がして見ると赤黒い血がついている。

「吹雪。起きろ…。」

嫌な予感がして、傷口に触らないように身体を揺する

「……ん…。」

ほんのり瞼が開いて、俺を見た。

途端にカバっと飛び起き上がってベッドの端に寄り、自分を守るようにして腕で身体を抱きしめカタカタと震える。ベッドには寝ていた肩の位置にべったり血がついていた。

「ご、ごめんなさい……僕ちゃんと約束守る…から、酷くしないで…もう身体痛いの…。」


それは普段見る吹雪とは全く別人だった。俺はどうしていいか分からず「ふ、吹雪。」ともう一度呼ぶと我に戻ったのか腕を身体から外して、今度はしっかり俺を見た。

「豪炎寺くん……?」

放心状態のような吹雪が確認するように尋ねてくる。

「ああ。」

「…あはは、なんか僕悪い夢でも見てたみたい。」

夢…?

「ごめんね。」

夢なわけない。笑って誤魔化すのはコイツの得意分野だ。何かあるに違いないと、今まで半疑だったものが確信に変わった。

「吹雪、ちょっとこっちに寄れ。」

さっきの動作からして確認したいことがある。

ひょこひょこと無防備に近づく吹雪の上着に手をかけバッと捲りあげる。

「うわああ!」

驚いて声をあげられる

よりも驚いたのは俺の方で、見えた吹雪の腹には無数の痣があった。

「おい、コレどうし「やめてよ!」

バシッ。と掴んでいる手を叩き落とされて、さっきとは打って変わって殺気立つ態度に多少驚く。自身でもそれに気がついたのか気を落ち着かせようと俯くが焦っているのが分かる。

しばらくしてやっと顔を上げたと思ったら、ぴょんっとベッドから降りて入り口まで行き

「豪炎寺くんには、関係ないって言ったじゃないか!」

と吐き捨てるように叫んだ後バンッと思いっきり戸を閉めて行った。


吹雪に怒鳴られたのは初めてだ。

確かに本人が言う通り、面倒事には関わらない方がいい。が、俺はどうしても吹雪の事が気になった。だいたい元から吹雪に関しては面倒な事ばかりだ。だから今更楽になろうと言う気はなかった。

そんなことを建て前や理由にしてはいるが、本当の俺は吹雪の事が心配でしょうがなかった。
何かあっても、どうせまた俺を頼ってくるんだろうと安心していた自分がどこかにいた。


あれ。何でだろうな。
苦手と言いつつも俺はいつもアイツの事を考えている気がする。



結局夕食の席に吹雪は来ず、部屋の机には主人がいない間部屋を守るようにぽつんと携帯だけが置かれていた。

無意識に奥歯がギリッと鳴り、イラついて焦っている。

そしていけないと分かっていながら、吹雪の携帯を覗いてしまった。


俺は吹雪の何を見ていたんだろう…。
無性に自分に対して腹が立った。



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