01


吹雪士郎。

はっきり言って苦手だ。愛想笑いは上手いくせにいざとなるとその壁はあっさり崩れる。男子って感じがしないな、男勝りな女子ってとこか。いや、全く勝ってないな。

今まで染岡にベッタリだったのに、この前のFFI選手権でアイツが選ばれなかったから、今度は俺になつき始めた。正直面倒だ。

エイリア学園との最後の試合の前、俺はいつまでも過去を引きずる吹雪にイラつき、釘を刺した。アイツや周りは豪炎寺(くん)のお陰でー、とか言ってるが勘違いにも程がある。俺は吹雪が苦手なんだ。



そんな風に思っているが気になる事がある。アイツが足の治療から復帰してからだ。
あんなに豪炎寺くん豪炎寺くんうるさかったのに、帰ってきてからはパッタリ言わなくなったんだ。

どうせ染岡がいるからだろ。そんな風に考えていたが違うらしい…。昼休み、午後の練習相手が染岡だったから昼食中にメニューを考えようと昼飯を持ってったら、意外にも染岡は風丸や土方達と食べていて吹雪の姿はなかった。

とっさに
「吹雪は?」と尋ねてみれば「それが、最近めっきり顔出さねぇんだ…。てっきりお前んとこ行ってると思ってたぜ。」

まぁどうでもよかった事だが、今まで世話してやった分の何かが納得いかなかった。

結局その日の午後の練習にも参加してなかったし、夕食の時もいなかった。マネージャーに聞いてみたが分からなかった。
一体何やってるんだ。



ようやく吹雪を見かけたのは午後11時を回りかけた時だった。トイレから戻る途中、階段を上がってくるのが見えた。
上がりきったところで、思わず「おい」と声をかけるとビクッと跳ねて此方を向いた。

「…なに?」

平然と。いつもと変わらない表情にイライラが募る。

「どこいってたんだ。…やる気あるのか?もうすぐ試合なんだぞ。」

つい言葉にも感情が出てしまう。

「…ご、ごめんね。明日はちゃんと出るよ。」

えへへ、と笑う。その時気づいたが、外から戻った吹雪は何故か代表ジャージではなく私服を着ていて、表情はなんとなく疲れてるように見えた。

「違う。俺はどこにいってたか聞いたんだ。」

するとしばらく顔を附せ

「…豪炎寺くんには、関係ないでしょ」

意外な応えだった。
不意討ちで後ろから鈍器で殴られたような…。あんなになついていたのにこの態度の豹変ぶりはなんなんだ。

「……とにかく、足引っ張るなよ。」

イラつきが頂点に達しそうだったし、俺自身もう疲れた。

吹雪は「ごめん。」と傷ついたような顔をしていたが無視して部屋に戻った。

傷ついたのは俺の方だ。
世話してやった礼も含めて事情くらい話したらどうなんだ。

モヤモヤした感情を消化できないまま布団に入った。




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