愛にレベルは関係ないっ





豪炎寺くんのなかで眠っているボクに、豪炎寺くんは話しかけてくれた。どちらかというとそれは豪炎寺くん自身というより心の声が聞こえたのに近いかも知れない。

『吹雪がいないと寂しい。』
『本当はあんなに冷たくするつもりじゃなかったんだ。』
『俺もルート戦じゃなくて、公式戦に出たい。』
『どうしてレベルが上がらないんだっ』
『吹雪に、…。吹雪と並んでサッカーがしたいのに』

あぁ。豪炎寺くんもおんなじ気持ちだったんだ。
目を開くと、走っているのが分かった。これは今豪炎寺くんが見ているものだ。

豪炎寺くんが、試合に出てる。これが豪炎寺くんが見ている世界。
すると心の声はさっきより優しくなって、今度はボクに話しかけてきた。


『誰とも比べる事なんてないんだ。吹雪は吹雪のサッカーをするんだ。それは吹雪にしかできない。』
『特別な能力なんて関係ない。』
『吹雪のサッカーが俺は好きだ。俺には出来ないことが出来る。しなやかなボール運び、スピードのあるシュート、インターバルの速さ。俺にはない力だ。』
『だから俺は特訓する。吹雪に追い付きたいからだ。』
『お互いが尊敬し合って、切磋琢磨しながらプレイして……これ以上に対等な関係と呼べるものがあるか?』
『選手としても恋人としても、俺は吹雪を尊敬している。』
『それに好きだ。用件がなくなって話したいし側にいたい。』
『…こんな事を言ったら吹雪をまた失望させるだろうか。』


…ううん。しないよ。

ボクは自分の心の中で呟いた。豪炎寺くんはボクの事をちゃんと考えてくれていたんだね。

ボクのサッカー。

楽しんでいなかったのはお互い様だったみたいだ。ボクも自分のサッカーをやるよ。皆にはなくてボクにしかできないこと。皆にしかできないこと。ひとりひとり個性があるからサッカーって楽しいんだ。


ありがとう。豪炎寺くん。

やっぱり、ボクの代わりは君にしか出来ないよ。











「まさかワンダバなしでミキシマックスするなんてな。」

ベッドに眠る吹雪の髪を鬼道がさらりと撫でた。

ガードンとの試合が終わった直後、吹雪は俺の身体から出てきた。ミキシマックスする前の状態よりはいくらか良くなったように見えたが、やはり熱中症だった。

「お前がスタジアムに返ってきた時は驚いたぞ。」
「俺も必死で、よく分からない状態だったしな。」
「見た目は変わっているし能力も桁違いだった。」
「ああ。」

吹雪とミキシマックスした身体は最高に気持ち良かった。格段に力が増したのにも関わらずすんなりコントロールできた。

「俺、吹雪と身体の相性いいのかもな。」
「その表現はやめろ。」
「本当の事だぞ。」
「そんなドヤ顔で言われてもな…。」

鬼道はなぜか溜め息をついて、部屋を出ていってしまった。本当の事なのに。

俺は床に膝をついて吹雪の様子を見た。吹雪の頬に手をやるとやっぱり少し熱い。だが無茶な能力行使の割りに熱中症以外に命に関わるような傷や症状は見当たらなかった。

「おつかれさま。」

試合中ずっと吹雪の声が響いていた。いや、吹雪自身からと言うより心からだった。吹雪と俺はきっと同じ気持ちだったんだ。

『けんかは…やだよ。』

吹雪の心の声がそう言っていた。でもな、吹雪。喧嘩じゃないんだ。

「…こういう関係を"ライバル"と言うんだ。吹雪が目指していた対等な関係だろ?」

吹雪の頬を一通り撫でたあと、優しく唇を重ねた。




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