愛にレベルは関係ないっ





俺は対等に渡り合っているつもりでも、吹雪にコンプレックスを抱かせてしまっていた事を知った。

対等なサッカー。
吹雪にとってそれがどういう意味かは分からないが、きっと今までたくさん悩んだんだと思うと何も気づけなかった自分が恋人としても選手としても情けなかった。



翌日。ガードンに到着してギャラクシーノーツ号を降りたとき、吹雪と話がしたくて仲間の中を目で探したが見当たらなかった。そしてそのまま時は過ぎて、もうすぐ試合が始まってしまうというのに吹雪の姿はない…。

「吹雪、どうしたんだ!?」
「今日はまだ見てないな。」
「もしかしてまだ寝てたりして…。」
「俺はノーツ号から降りるのを見たよ。」
「皆落ち着けよ、きっと何かあったんだ。」

皆暑さのせいか苛立ちを隠せない。監督は何も言わない。吹雪を出場させるつもりらしい。だが吹雪が来る気配は一向にない。スタジアムには予定の時間に決められた16人しか入れない。だからここにいないなら控えのメンバーといるのかもしれないとの声も上がった。

「監督、吹雪を探してきます。」
「…………戻らなければ瞬木を出す。」

俺はベンチを離れ街を探し始めた。吹雪が試合放棄するはずがない。周りから、よく知りもしないくせに吹雪を悪く言われたようで腹が立った。

暑さで体力が奪われていく。
走り続けて、駅の近くに行くと人だかりが出来ていた。ひとりが俺に気づくと慌てて寄ってきた。

「そのユニフォーム!あんた、チキュウ人だろ!?あんたと同じやつが倒れてるんだ!」

まさかと思い人だかりを掻き分けて進むと、輪の中心には吹雪がぐったりと倒れていた。

「吹雪!」
「俺たちはチキュウ人の扱いを知らないんだ。助けてやってくれ。」

俺が来たのに安心したのか周りを取り巻いていたガードン人は徐々に離れていった。

「吹雪!聞こえるか?」
「……ご…ぇん…じ、くん?」

汗で張り付いている前髪をよけてやるとうっすらと目が開いた。呼吸が荒く身体も熱い。熱中症か。幸い駅が近い。早くノーツ号に戻って部屋で休ませなければ。

「吹雪、立てるか?」

脇に肩を入れ起き上がらせようとしたが意識が朦朧としているせいで上手くバランスが取れない。この星の気候は吹雪に相当合わないらしい。

「…しあいは……?」
「もうすぐ始まる。心配するな。吹雪の分は瞬木が出るはずだ。」
「…ぃ……いやら…」
「吹雪っ…無理するな。」

いきなり駅とは反対方向に歩こうとするから吹雪はバランスを崩しまた倒れてしまう。慌てて俺にもたれかかるように上半身を起こさせると、触れている部分から俺よりも高い熱を感じた。

「むり、してないょ…」
「こんな状態でサッカーは無理だ。」
「…だって……やっとここまで…きたんだもん……。」

早くスタジアムの方にと動く吹雪の身体を後ろから抱きしめる。

「士郎っ……頼むから…これ以上頑張らないでくれ。」
「…だって……だってがんばらないと…豪炎寺くんに追いつけない…。」

抱きしめる腕にぽたぽたとなにか…水?…。

「士郎?」
「豪炎寺くんに…おいつか、ないと……。」
「……士郎!?」

吹雪の意識が飛び身体が一気に重くなったのを、回した腕だけで支えきれずふたりして地面に倒れる。暑い。俺も、吹雪も、地面も、空気も。

「吹雪、しっかりしろ。」
「……す…」
「ん?」

ぐったりと動かない身体を姫抱きにしようとしたとき、吹雪の唇が何かを紡いだ。

「……きす…して…。」

頬にはうっすら涙の後が残っていた。それを見て俺は黙って唇を重ねた。

『ボクの代わりは豪炎寺くんだけだよ。』

重ねた瞬間。心の中に直に吹雪の声が響いた。それは口から発せられた言葉ではない。
その瞬間腕の中にいた吹雪の身体がフッと消え、俺は地面に手をついた。同時に電流のようなものがバチッと身体を駆け抜ける。

「っ!?…ふぶき?………吹雪!」

何が起きたのか理解できずに辺りを見回して吹雪を探す。だけどもちろん吹雪の姿はない。分からないまま吹雪がいたであろう空間に話しかける。

「吹雪!」
『豪炎寺くん。』
「吹雪!?どこだ!?」
『君のナカだよ。』
「俺の…?」

思わず胸の辺りを握る。…そう言えばさっきより暑く感じない。それに俺の肌って意外と、白い…?

『ボク、しばらく休むよ…。』
「吹雪。大丈夫なのか?」
『うん……君こそ気をつけてね…。』
「…ああ。」

それっきり吹雪は話しかけて来なかったが、意図を読み取った俺はスタジアムに向かって走り出した。とにかく必死だった。




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