愛にレベルは関係ないっ





試合の後、俺が感情に任せて自分勝手に振る舞ったばかりに吹雪を傷つけてしまった。




「それでまた落ち込んでいるのか。バカかお前は。」
「……言うな。」

脚にローラーがついた椅子の背もたれに向かうように座っている俺に、ベッドの縁に腰かけてサッカー雑誌を広げているこの部屋の持ち主が口を開いた。

「吹雪はお前にレベルの低い男は嫌いだと言ったのか?」
「言ってない。」
「吹雪はお前にレベルの低い奴は努力不足だと言ったのか?」
「言ってない!」
「…怒鳴るな、めんどくさい。」

どうしてここにいるかと言うと…
あの後軽くランニングしてグラウンドに戻るとそこには仁王立ちの鬼道が待っていた訳だ。

「………吹雪は、何か言ってたか?」
「お前には何て言ったんだ。」
「身体に気をつけて…と。」
「はぁ〜、吹雪が不憫だ。」
「………。」

呆れられてもしょうがない。だけど俺は吹雪と同じ目で世界をみたいんだ。

吹雪はレベルアップが難しい体質だ。レベルアップが難しい体質というのはあくまで俺よりということだが、吹雪は1レベルアップするのに必要な経験値が俺より遥かに多かった。だからこんなにレベルに差が開いているのに気づいた時は驚いた。同時に俺は吹雪が一気に遠くなったような気がした。

「豪炎寺、なぜ吹雪がレベルがあんなに高いと思う?」
「頑張ったからだろ。」
「そうだ。では吹雪は何のために頑張ってレベルを上げたと思う?」
「…何がいいたい。」

はっきり言ってこない鬼道の言葉に目を細めるが鬼道の視線は雑誌に向いていた。
確かに吹雪がどうしてそこまでレベルを上げたがっているのか知らなかった。だいたい俺は吹雪がレベル上げに必死になっているのにも気がつかなかったんだから…。

「察しが悪いお前に教えてやろう。吹雪はな、お前に追い付きたい一心でレベルをあげていたんだ。」
「は?…俺は吹雪よりレベル低いじゃないか。」
「そうだな。まぁ吹雪はお前のレベルが99だと思ってたらしいがな。」
「…………。」
「おい、本気で落ち込むな。大事なのはここからだ。」
「……なんだ、正直もう部屋に帰りたい。」

吹雪の期待を裏切ってしまった事に俺自身が傷ついた。

「安心しろ、確かに吹雪は勘違いしていたがそれは関係ない。」
「じゃあ何が…」
「ソウルだ。」
「ソウル?」
「あぁ。」

ソウルって、あのソウルだよな。今回この大会において重要な能力だ。大会に参加している誰もが知らないわけがない。俺も興味はあったが…、それが吹雪がレベルをあげるのとどう関係しているのか分からない。

「己の身にソウルが宿っていない場合。覚醒書を使ってソウルを宿らせることが出来るのは知っているな?」
「あぁ。だが自分の物ではない分相当な実力がなければ維持するのが難しく自分が食われてしまうらしいな………まさか。」

さっきの鬼道の言動と何かが頭のなかで結び付いた。まさか吹雪はソウルがほしいのか…?
そこでやっと鬼道は雑誌から顔を上げた。

「監督と、レベル90に到達できたら覚醒書をもらえる約束をしたらしい。」
「なんでそんな」
「お前は化身が使えるだろうが、吹雪は使えない。」
「………。」
「はぁ。お前本当に察しが悪いな。」
「うるさい。」
「…化身という能力を持っていない吹雪が、ソウルを宿らせる事でお前と対等なサッカーをしようと思うのはありえる判断だと思うが。」
「対等な、サッカー…。」




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