君と生きる明日




あの日からどれくらいたっただろうか…。
世界で一番大切にしていた愛しい人が空に旅立ってから。


『…ごめんね……大好き、だよ…。』

最後に見た吹雪は笑っていた。焦点の合わない瞳で俺を探して…
しっかり握っていた筈の掌は俺の手をすり抜け力なくパタンと滑り落ちた。

俺の叫んだ声は、届いていただろうか…。




街路を歩きながら、はぁっと吐けば白い息が出る。

あれから十年だ。
この季節になるといつも思い出す。あいつは雪景色がよく似合っていたから。


ピピピッと携帯が鳴って、ポケットから取り出し見てみれば今の恋人からのメールだった。
急いでいる訳ではないが、女性っていうのはなるべく若く綺麗なうちに結婚してしまいたいそうだ。

いまの恋人とは付き合って4年になる。もちろん好きだ。こんな過去の恋愛や後悔を引きずってダラダラ生きている男を選んでくれて、愛してくれて。でも、それでも忘れられないんだ。

両方の親からの期待もあって結婚は遠からずする事になるだろう。俺もそれは嬉しい。
相手からも何回かアプローチを受けている。

だが決めきれていないのは、このまま結婚という節目を迎えたら俺の中にいるアイツの居場所を消してしまいそうで…。

きっとアイツは俺の幸せを願うんだろう。
でもそれは俺が勝手に思っているだけかもしれない。俺がただ罪悪感から逃げるために、背中を無理やり押すように考えているだけなのかもしれない。

だって生きていたら―――――…


やめた。
思うだけ虚しい。

こんな、自分との葛藤が続いている。もう答えは出ているんだ。
それは一つしかない。

だけど、俺は。



この決断がきっと人生の切り替え地点になるだろうと、そんな、自分に迷っている時だった。


家に帰るとき、通りからマンションの自分の部屋の階に灯りがついているのが見えた。
強盗か!?と部屋に急いで向かい、ガチャと玄関の扉を開くと

「あ、ごーえんじくん。おかえり!」

そこには病で死んだ筈の元恋人。
吹雪士郎が立っていた。





―――――――…

ありがちネタで、続く予定はないです。





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