この時がずっと…



ゆらゆら、ゆらゆら

遠退いていた意識がうっすら戻ってくる。

なんだろ、あったかい…。
これは……背中?
狐色の髪……豪炎寺くん?…に僕おんぶされてる。
あれ、僕どうしたんだっけ…。

まだ覚醒しきれていない頭で過去にさかのぼる。
練習が終わって夕飯食べてお風呂入って、えーっと…
確か皆で星を見に行こうってなって………そっか、僕寝ちゃったんだ。


豪炎寺くん、あったかいなぁ。ゆりかごみたいに気持ちよくて、また寝ちゃいそうだよ。

思いきって隣を独占して良かったかもしれない。
いつもはキャプテンや鬼道くんや虎丸くんがいるけど、せめて星を眺めている間だけは君といたかったんだ。
だってこんな時しか君の隣にいれるチャンスなんてないんだから…。

それにこんな事までしてもらえるなんて今日はついてるかも。


あぁ、もうすぐ僕の部屋だ。
きっと君は僕を部屋に置いたら行っちゃうんだろうな…。


「吹雪。吹雪、ほら部屋についたぞ。」

僕の部屋の前まで来ると豪炎寺くんは僕を起こそうとゆさゆさ身体を揺する。

「んーん。」

背中に頭を擦って駄々をこねると。しょうがないな、というように溜め息をついて足で扉を開けた。

そのまま入って行って僕を下ろす為にベッドに座る。

「吹雪。」

仕方なく回していた腕をほどいて横になる。
豪炎寺くんは僕に布団をかけるとすぐ部屋から出ていこうとするから反射的に腕を掴んじゃった。

ど、どうしよう…。

「どうした?」

一瞬驚いた表情をしたけど直ぐにあの優しい目になる。僕はこの目が大好きなんだ。

もう何でもいいや、今日は甘えちゃえっ

「一緒に、寝てほしいな。」

僕の精一杯の勇気を振り絞って言ってしまった。僕をここまで運んでくれたのがただの優しさだけじゃないなら、僕に応えてほしい…!

なのに無情にも君は

「悪い。これから円堂たちとミーティングがあるんだ。」

そう言って僕の手をそっと外し布団の中に戻すと「おやすみ。」と部屋から出ていってしまった。



ショック、なんてもんじゃない
パリンって心のどこかにヒビが入ったみたい。やっぱり僕ってそう言う対象に見られてないんだね。

はぁ…。
今日は良いことがあったはずなのに今の気持ちに押し潰されそうだ。
眠さのせいか普段起きている時よりもダメージは少ないかもしれないけど………

もういいや、寝ちゃお
これで僕の気持ちが折れた訳じゃないし。豪炎寺くんには先約があったんだから、きっと僕が同じ状況にいてもそうするとおも………相手が豪炎寺くんだったらしないかも。
いやいや、今日はいつもより小さな幸せが沢山あったのに、僕が我が儘いっちゃったからだよね。ごめんなさい。



ふぁあ…。
寝よう。今度こそ本当に寝よう。朝起きたらまたいつも通り一番におはようって言うんだ。豪炎寺くんは早起きだから、僕も負けないくらい早く起きないと。


……おやすみ、豪炎寺くん。






そうして逃避するように寝た僕だけど
朝暑さで目を覚ますと、いつのまに入ったのか隣に豪炎寺くんが僕を抱きしめるように寝ていて、僕の胸は驚きと幸せでいっぱいになった。

「ふふふ」

髪を撫でると、いつもみたいにピシッとしてなくて、サラッと指が通る。こんな事出来るのもきっと今だけ。


これがまたただの優しさでもいい、だけど今、この時がいつもより長く、ずっと続きますように。





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