▼ 僕の豪炎寺くん4
二人分の荒い呼吸音が部屋に響く
疲れてぐったり寄りかかる吹雪の頭を撫でてやると「んー。」と甘えた声を出し、さっきとは打って変わって優しい時間が流れる。
「ハァ…今日は…僕がするって言ったのに……いじわる。」
キッと睨まれても、その赤く染まった表情ではダメージはゼロ。
まだ言ってたのか…
はぁ。とため息をつき吹雪を抱きしめたまま倒れギシッとベッドが鳴る。
俺の上で呼吸を整える吹雪はまだ余裕がなさそうだ。
「何かあったのか?吹雪からしたいなんて珍しい。」
吹雪が落ち着くのを待って聞いてみた。俺のことで何か悩んでいるなら教えてほしい。
「………だって…。」
吹雪は若干拗ねたような声色でボソッと呟いた。
「ん?」
聞こえなくて聞き返すと、横にだらんと垂れていた腕が俺の首に回されさらに吹雪と密着する。
「だって、豪炎寺くん最近虎丸くんばっかで…かまってくれないんだもん…。」
「え…。」
そのことに全く心当たりがなかったわけじゃないが、吹雪が気にするほど俺は素っ気なかっただろうか…。
涙を堪えるような声で言われてちょっと考えてみた。
どうして吹雪はこういう行為に踏み切ったんだろう。
確かに最近虎丸に付きっきりだったせいで、休憩中も吹雪といる時間は少なかった。練習がハードになって部屋を行き来する機会も前よりは減った。
だが試合のためであって、それは吹雪も分かってくれていると思っていた。
いや、実際分かっているんだろうな。
吹雪の背中に腕を回してゆっくり擦ってやると、吹雪はずびっと鼻をすすった。
きっと分かっているからこそ、寂しい思いをさせたのかもしれない。
吹雪は与えられる幸せに慣れていないから、寂しい思いや苦しい思いを隠す癖がある。平気そうに見えて不安をひとりで抱え込む。
そう言う所、素直に甘えてこない。
吹雪は強がりだからな。
このいきなりに感じた行為も、不器用な愛情表現で
ただ自分を見てほしかったんだろうな。
逆の立場だったら俺もモヤモヤするだろうし嫌だ。
「……ごめん。」
回した腕に力を入れれば、吹雪の腕にも力が入りお互いをきゅっと抱きしめた。
俺って愛されてるなって感じる。
寂しい思いさせてごめんな、吹雪。