スターバレンタイン




もしかしたら今日は神様がくれた最後のチャンスなのかもしれない…。

足の治療のために帰国する前日、豪炎寺くんから告白されんだ。

最初は戸惑ったけど、よくお見舞いの電話をかけてきてくれたり、テレビの中で頑張ってる姿を見るうちに、いつのまにか好きになっていた。

けど返事は戻ってきてからでいいって言われてそのまんま。

その応えを今日、伝えたい。



「あ!流れ星だ!」

「え!?どこっすかー?」


今日は七夕

マネージャーが用意してくれた笹に皆で短冊を飾る事になったんだ。


ライオコット島の星空は本当に綺麗で、まるで星が宝石みたい。

なかなか空を見上げる機会がなかったから分からなかったけど、こんなに素敵な景色が広がってたんだね。

「吹雪ぃー!書けたかー?」

「キャプテン。改めて考えるとなかなか出てこなくて…。キャプテンは何にしたの?」

「俺は"ずっと皆とサッカーできますように!"って!」

「ふふ//キャプテンらしいね。」

僕も、考えすぎずこのくらいシンプルなやつが思い浮かべば…

「吹雪も書いたら飾れよっ」

「うん。」


まぁ。
あるといえばあるんだけど//
これは飾れない。

張本人を探して周りを見渡すけど姿がない。

きっと虎丸くんといるんだろうな…
僕がいない間に色んな事があって、僕への想いなんてきっと一時の心の歪みになってるかもしれない。

……もう!
ネガティブになっちゃだめだ。
伝えるだけでいい。そう、別に相愛にならなくたって…


星を見ながら宿舎の周りを歩いていたら、グラウンドの林の近くに今一番会いたかった人物が立ってるのが見えた。

それを見て思わず駆け寄る。

「ご、豪炎寺くん//」

「……吹雪。」

特に驚いた様子もなく僕に振り向く。ひとりなんて珍しい…

「もう願い事は書いたの?」

「あぁ。いちおうな。」


そっかぁ。
どんな願い事だったのか気になる。後でこっそり見ちゃお//

「…吹雪、ちょっと来い。」

「……え?」

いきなりグイッと腕を引っ張られ林の中に連れられる。

な、なになに!?

「ここだ。」

着いた場所は来た道が分からなくなるほど深く入った林の中。もう森みたい。地面はもうグラウンドのような砂地ではなく、芝のような草がサワサワと夜風に揺れていた。

「ここ、どこ?」

だいぶ宿舎から離れちゃったけど…

キョロキョロ辺りを見回すけど明かりひとつ見えない。
すると豪炎寺くんは近くの木の根本に腰をおろし脚の間をポンポンとたたく。

え、もしかして座れってこと//!?

もう、「吹雪。」だなんて優しく名前を呼ばれれば、従うしかないじゃないか//

おずおずと間に座ると後ろから腕が回される。
うぅ//ドキドキして上手く言葉が出せない。

「吹雪、上見てみろ。」

「……へ?」

かけられた言葉に、顔をあげると…

「わぁ。……きれー…。」

そこには満点の星空。さっきは宿舎の光で見えなかった星も全部見える。ここだけ時間が止まったみたいな感覚。心もだんだん落ち着いてきた。

「…どうして、あそこにいたの?」

「…………ひとりに、なりたかったんだ。」

「え!?じゃあ僕お邪魔に…」

「ち、違うんだ!」

慌てて立ち上がろうとすると回された腕に力が入って、ぎゅーって後ろから抱きしめられる。

うぅ//ち、近いよぉ…
でもなんだろ、好きな人にこうされるのって幸せ

「吹雪の事を、考えてた…」

「え…?」

僕の事?どうして…
君はずっと虎丸くんの事気にかけてるじゃないか

「吹雪。帰国する前に話したこと、覚えてるか?」

ゆっくりと切り出されたあの話。

「うん。……もちろんだよ。」

だって僕の人生で、初めて人を好きになったんだ。その始まりを忘れるわけない。

「君はもう、気持ちが変わってるかもしれないけど……。七夕の願い事だと思って、最後まで聞いてね。」

彼が軽くうなずく。
きっとこれが本当に最後のチャンスだ。

「…君から告白されたとき、びっくりしたけど嫌じゃなかったんだ。」

そう、不思議と嫌悪とかは全くなかった。それよりもむしろ

「嬉しかった//豪炎寺くんから想われてるんだって分かって。……もう遅いかもしれないけど僕、君の事が…すき//………!?」

勇気を出して言い終わった瞬間、見上げていたはずの夜空が見えなくなった。

気づけば振り向くように頭を回されていて、代わりに感じるのは、唇に彼の暖かな温もりで…


え!これって、僕…キスされてる!?

「ふぁあ!」

慌てて離したけど、唇にはまた感覚が残っていて
は、恥ずかしい…//

すると俯く僕の顔の頬に手を添えられてまたそっと上を向かされる。
彼は僕の目を捕らえて

「よかった。俺も、吹雪が好きだ。」

なんてハッキリ言うから、今までの不安も何もかも吹っ飛んじゃった。

伝えるだけでよかった願い事も、叶ったどころかお釣りまで来ちゃったよ。


「返事は戻ってきてからでいい。だなんて自分から言っといて、聞くのが怖かったんだ。」

僕を抱きしめながら肩に彼の顔がのせされる。

「吹雪と近づきたいと思いながらも関係を壊したくなかった。」

ふふ//
お互いちょっとすれ違ってただけなんだね。

「豪炎寺くん、僕、今度は君に願い事があるんだ。」

「……なんだ?」

「あのね、君のものにしてほしいな…//」

一生とは言わない。
せめてこうして二人で会える間だけでも…

そんな僕の気持ちを悟ったのか回されていた腕にさらに力がこもって、豪炎寺くんのほっぺが僕のほっぺを撫でる。

「もう俺のだ。…ずっと、俺の吹雪だ//」

「ふふ//」

幸せ。

七夕は家族の事を願って寂しい思いがあったけど、今年は違う。
僕を心から愛してくれる人に出会えて結ばれた。


もしかしたら、寂しがる僕に家族が贈った出会いなのかもしれない。


星空の下
もう一度したキスは甘く

この愛しい人とずっと一緒にいたいと思った。





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