▼ お泊まり鬼道さん
高校生設定。
豪炎寺と吹雪はアパートで同棲してます。和室です。
だいたい皆同じ学校に通ってます。
吹雪。早く帰ってこい。
はやく、はやく………!
ガチャ
「ただいまー。帰りにスーパー寄ってたら遅くなっちゃった。」
玄関の方から吹雪の声がする。
「おかえり。」
平然と返すが本当はすごく会いたかったんだぞ。トテトテと部屋に向かう足音がする。
「今日はシチューにしようと思うんだけどどうか…………な!?」
「おかえり、吹雪。邪魔してるぞ。」
テーブルを挟んだ向かい側の鬼道が吹雪に挨拶する。そう、訳あって今日は鬼道が来ている…。
「…鬼道くん。いらっしゃい。」
どういうこと!?
吹雪が目で訴えてくる。すまん。買い物に誘われて、帰りがてらそのままついてきてしまった。はぁー…。吹雪と俺が同棲しているのは周りには話していない、が今ので分かっただろうな
「いや、誤解のないように言っておくが何も二人の仲をどうこうしにきた訳ではないんだ。うん。お前ら本当仲良いよな…。……豪炎寺…いま幸せか?」
なんなんだコイツは。
うちに来る前はこんなテンションじゃなかった気がするんだが…。
「あぁ。」
本当幸せ過ぎて困るくらい幸せだよ。
「やっぱり、いつかは大人になるんだよな……俺も大人にならなければ…。」
「き、鬼道くん。大丈夫…?」
さすがの吹雪も異変に気づいたのか、夕飯の支度をしながらこちらを気にかける。……ん?なんかさっきの質問と話が繋がってなくないか?
「あぁ。ありがとう。俺には良い仲間がいたんだな。」
「鬼道くん…!その、僕たちに出来ることがあったら何でも言ってね!」
"仲間"という言葉に反応したのか吹雪が鬼道を慰める。俺としては正直気にくわない。話の逸れ方といい、どうせ俺と俺の可愛い吹雪の関係が気になって家に入り込み、あわよくば夕飯を頂こうと言う魂胆だろう…。吹雪の手料理は絶対にやらん!
なんて大人げない事を思っていたが、現実はもっと深刻なものだった。
「そうだな…。もし迷惑でなければ、しばらく泊めてもらえないだろうか…。」
「もちろん断る。」
即答当たり前だ。
そんな事していつまでもいられたら生活に差し支えるだろう…。
「ちょっと豪炎寺くんっ。少しの間だけだよ。」
「!?なんでソイツの肩を持つんだ。」
吹雪は"仲間"のためなら何でも尽くすからな。その気持ちは分からないでもないが、"俺たち仲間だろ"詐欺に騙されないか不安でしょうがない。
そうこうしてる間に
「ありがとう吹雪……………と豪炎寺。」
「ううん。何にもないけど、ゆっくりしてってね。」
おい。話が勝手に進んでるぞ。しかも鬼道、俺の事忘れてただろ。
「はぁ良かった。本当に良かった!俺は大人になれそうだ。」
鬼道の表情が晴れやかになる。とは逆に俺の表情は曇っていく。
「じゃあ僕夕飯作っちゃうね。」
背を向けて台所に立つ吹雪の背中を目で追う。いつもだったら後ろから抱きしめてやるのに…。
「というわけで豪炎寺、よろしくな。」
向かいの鬼道はさっきとは別人のような豹変ぶりだ。たっく、厄介なのが来たもんだ。
「……我が家は10時消灯だからな。」
吹雪とイチャイチャできないなんて気分は絶望に等しい。だから若干ひねくれた。
しかし!
どさくさに"我が家"なんて初めて使ったが、うん、悪くない!むしろなんだろう…この幸福感は……。
人が来ると改めて実感するな。お揃いの茶碗とか箸とか俺が好きな食べ物とか吹雪が苦手な番組とかそう言う、二人しか知らない些細なことを知っているのが嬉しい。
というかだ。
待てよ。よく考えたら…
「鬼道の布団はどうするんだ?」
夕飯を運ぶ吹雪に問うと
「あー。どうしよう…」
考えてなかった。って
何か嫌な予感がする。
「いや、無理しないでくれ。」
そうだ。無理しないことにしよう。どうせ予約もせずいきなりきた居候だ。
あぁ。なんだろう、俺は自分で思ってる以上に小さい人間だったんだな。
だって吹雪が、鬼道の肩なんてもつから…。
「ううん。僕か豪炎寺くんがどくよ。」
「吹雪、コイツに一枚丸々やる必要なんてないんだぞ。」
そんな妬き餅から来たちょっとした意地悪だったが…
「豪炎寺の言うとおりだ。布団一枚を使うのは申し訳ない……俺がどちらかと一緒に寝よう。吹雪、すまんが一緒に「やっぱり客だし一枚布団がいいよな!」
コイツ、まったく油断できない…
危うく俺自身が誘導するところだった。誰が吹雪と寝させられるか。
「うん。じゃあそうしよっか。」
「……すまんな。」
どこかガッカリしたような鬼道。お前、本当に吹雪の事が気になって訪ねたんじゃないだろうな!?
夕飯の支度が整って吹雪もエプロンを外し、俺と鬼道の真ん中に隣に座る。まぁテーブル丸いし真ん中って表現は変か…。間に座る、だな。
「今日は久しぶりにシチューにしてみたよ。口に合うといいんだけど…」
心配そうに鬼道を見つめる。
「大丈夫だ。吹雪の料理なら何でも美味いぞ。」
「それは俺の台詞だっ!」
思わず心の声が外に出る。
「ふふ//よかった。じゃ、食べよっか」
「あぁ。」
若干まだモヤモヤした感情と闘いながら、愛しい人が作ってくれた食事に目を落とす。
今日も美味しそうだな。
「じゃあ、手を合わせて。……いただきます。」
『いただきます。』
…とりあえず今誰も近づけないくらい、吹雪は俺のだと世界に知らしめたい。
―――――――
長いっ(笑)どこかで切ればよかった。基山くんバージョンも書きたい…
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