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 修也くんと士郎くん4


高校に入って一週間。
まだ回っていない場所はあるけど、だんだん学校に慣れてきた。

「吹雪くん、次移動だよ。」
「あ、ヒロトくん。いまいくよ。」

ヒロトくんは初日から友好的に話しかけてきてくれたひとりだ。優しくて、結構モテるみたい。

「朝から雨なんて憂鬱だね。」
「午後は荒れるみたいだよ。」
「そっかー…。」

渡り廊下からびちょびちょのグラウンドが見えた。

あれから豪炎寺くんには会えていない。学校に来ているのか、来ていないのか、それすらも謎だ。でも来ていたらきっと僕のところに来るって勝手に思い込んでるから、僕に顔も出さず来ていたらちょっと凹むかな。

はぁ、雨ってなんだかネガティブにさせる天気だね…。


「どうしたの?ボーッとしちゃって。」
「え?あ、ごめん。ちょっと考え事…」
「へぇ、吹雪くんでも悩みあるんだ。」
「"でも"ってなにさ、"でも"って。」
「ごめんごめん。吹雪くんってのほほんと生きてそうだからさ。」

機嫌を損ねた僕はムスッとする。
ヒロトくんが膨らませたほっぺをつついてくるから、そっぽを向くとまた雨が降っているのが目に入った。

………豪炎寺くん、何してるかな。

「あ。先輩だ。」
「……?」

ヒロトくんが立ち止まるから、僕も立ち止まって先を確認する。

「あーあ、かったりぃ」
「やっぱりサボればよかったな!」
「だな。」

そこにはこの前僕に絡んできた先輩がいた。まずい。また絡まれたら厄介だ。

「…ひとつ下の階から行こう。」
「そうだね。問題は起こしたくないし…」

こういう学校だって知ってはいたけど、毎日気にしていかなきゃいけないと思うと生きづらいなぁ…



―――…―――…


「じゃあ、授業終わるぞ。解散。」

今日最後の授業が終わった。
僕は、やっぱり気になってお隣のクラスに行ってみることにした。

「…あの、豪炎寺くんいるかな?」
「あー。最近見てないなぁ…。」

四組に友達はいないから、入り口のところにいた男の子に話かけた。

「何か用事?あいつ不良っぽいし、たぶんなかなか来ないと思うよ。」
「そっか。…ありがとう」

豪炎寺くんは来ていなかった。様子からすると、きっとこの間の新勧から来ていないみたい。

「あ、吹雪くん。会えた?」
「ううん。いなかった。」

ヒロトくんとは帰る方向が同じで、一緒に帰っている。僕は徒歩だけど、ヒロトくんは電車通学だから途中の駅で別れる。

「まぁ、いつかは会えるよ。彼だっていちおう学校来る気があるから入ったんだし。」
「そうだよね…」
「元気だしてね。…じゃ、俺はここで。」
「あ、うん。また明日。」

ヒロトくんがいなくなって、僕はひとりで歩き出す。
あ。そう言えば今日の夕飯の食材買っていかないと…。冷蔵庫が空なのを思い出して財布を確認した。うん。たぶん今日の分くらいなら買えるかな。

家の近くのスーパーに入って惣菜コーナーを見る。

"元気だしてね。"

ふとヒロトくんの言葉がよみがえった。僕、そんなに元気なかったかな。自分じゃ気づかなかったけど。
……ん?それって、豪炎寺くんが原因ってこと?

いやいや。確かに彼は友達だから休んでたら心配はするけど、死んだ訳じゃないし元気をなくすほどじゃないよ。


……友達だから。か…。
自分で思っときながらその言葉がひっかかった。
なんでだろ。豪炎寺くんは友達だよ。ちょっとやんちゃだけど、"友達1号"の称号もらったし。

っは。と気がつけば僕はずいぶん店内を歩き回っていた。さっきまで揚げ物が見えていたのに、今はカップ麺が目の前にずらいと並んでいた。
…あ、これ今日の夜食にしよう。

夕飯の事をすっとばしてひとつ気に入ったのに手を伸ばしたとき、他の誰かの手とぶつかった。

「!、すみませ………あ!」
「?…あ。」

その相手は、噂の豪炎寺くんだった。




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