▼ 04
「服脱いでください。あ、お風呂入りますか?」
部屋に入ると、生活感のある台所と奥に居間がある。
「いや、大丈夫だ。」
「え…でも…。」
見上げてくる瞳に捕えられる。
「……着替えがないだろ。」
「あ、あります!」
"少し"雨宿りしていくつもりだったのだが…
やけに食いつく姿に押されて。
「シャワーだけ借りよう。」
「はいっ//」
雨雲なんか吹き飛ばしそうな微笑む笑顔にこっちも何故か微笑む。
こんな感情おかしいだろうか。可愛いと思ったり抱きしめたくなったり、無駄に触れたいと思うのは吹雪が年下だから妹と同じ感覚になっているのか?
いや、あのとき、吹雪を見つけたときのあの感情は…
『着替え、置いておきますね。』
と脱衣所で聞こえる声に適当に返事を返し、膨らむ気持ちをシャワーの水で流そうとする。
風呂場から出ると、乾燥機がまだガタガタと音を立てていた。
そばには吹雪の物じゃないだろうサイズの薄水色のワイシャツが置いてあった。制服のズボンはそこまで濡れていなかったから着替えを頼まなかったが再度穿くと少し気持ち悪い。
「……吹雪?」
着替えを済ませ居間に入るとテレビをつけたまま、円卓の上に腕を伸ばしてすぅすぅと吹雪が寝息を立てている。
視線をずらし窓から見た外は雨雲はまだ暗くあるものの雨は降っていなかった。
そんなに長く入っていたつもりじゃなかったんだが…
「…………。」
起こすのも可哀想だと思い、静かに隣に腰をおろした。急いでいる訳じゃないしな。
すやすや眠る寝顔はあどけなくて、一つ年代が違うとこんなに幼く見えるのかと驚く。
薄く色づいた頬に触れると「…ん。」と声をもらす。
「……染岡せんぱぃ//」
こぼれた言葉は優しくて微笑む表情はさっきのものとは違って、声はまるで恋焦がれるように甘い。
染岡先輩…?
吹雪が言っているのは同じサッカー部の、あの染岡の事か?
「……………ん、…あれ…?」
パチッと吹雪の目が開いた。ぼーっと目を擦りながらしばらく辺りを見回しすぐそばに俺がいるのを確認すると「わぁ!//」
と驚いて跳び跳ねた。
可愛い。
「ごめんなさい//僕いつのまにか寝ちゃった見たいで…//」
「いや。」
あはは、と笑う吹雪。
染岡とはどういう関係なんだ。と凄く疑問を持った。
吹雪はサッカー部に入っているわけじゃないし、染岡と歩いているところも見たことがない。
「服、サイズ大丈夫でした?」
「ああ。」
「よかった。あ、お茶入れますね。」
立ち上がろうとする吹雪の二の腕を掴んだ。今日あったばかりの人にこんな事聞くなんて図々しいが、気になる。
「染岡の事が好きなのか?」
するとボンッと音がしそうなほど吹雪の顔がいっきに赤くなって、それが答えだと思った。
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