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 03


吹雪を濡らせまいと庇うあまり自分の肩が濡れてしまっていたが、気にならなかった。俺はどうしてしまったんだろうか…。

「そこ、左です。」

優しい声は耳をすまさないと雨にかき消されそうなほど弱いが、俺にしか聞こえないというだけで何故か胸が高鳴った。

「すみません。送ってもらっちゃって…」

「いや、サインさえもらえれば。」

「あ、そう言えば今お助け週間でしたね。」

そっかそっか。とまた俯く
たぶんそうじゃなくても放っておけなかった。お助け週間は関係ない。そう言いたかったが、何かおかしい気がして言えなかった。

「ここです。」

いつの間にか目的地についていたようだ。少し年期が入ったアパート。吹雪は二階、右から二つ目の部屋を指差した。そして俺の方を見て

「肩、濡れてます。良かったら上がっていきませんか?」

思いかけない誘いにドキッと胸打った。そう言う誘いじゃない事くらい分かっているが、背丈的に上目遣いになり申し訳なさそうに眉を寄せる仕草はグッときた。

「……悪いな。」

お礼に雨宿りでもさせてもらう事にしよう。

雨は先程よりも弱くなっていた。




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