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 02




玄関にひとり、ぼーっと空を見続けている。その手に傘はなかった。

天気予報であれだけ梅雨入りしたと言ってたのに、忘れてきたのか。


背丈的に、一年か…

中性的な顔立ちに柔らかに揺れる髪、女子かと思ってしまうほど華奢な身体。

無性に胸がざわついた。
シトシトと降る雨を背景に、ひとりだけその湿り気をまとわない清輝な雰囲気を放っていたから。

「傘、忘れたのか?」

気がついた時にはもう声をかけていた。何故かコイツだけは俺が手を貸したかった。

「え?…あ、はい。」

「良かったら送るぞ。」

「いや、でも…」

「いいから。ほら。」

ッパと傘を開いて、口ごもる少年の腕を引き中へ入れる。近づけばよく分かる。俺よりもひとまわりもふたまわり小さく、そんなに大きいとは言えない傘にも二人ですっぽり収まった。

「方向は?」

「あ、えっと……あっち…です。」

「わかった。途中曲がったりするなら言えよ。」

「うん。」

少し強引にやってしまったがと思ったが、素直に答える様子に安堵する。

歩き出した方角には、先にちらほら下校する生徒が見えた。

「そう言えば名前は?」

「吹雪士郎。一年です。」

「そうか。俺は豪炎寺修也。二年だ。」

「先輩…だったんですね。」


目線的に伏せ目がちに見える瞳には、長いまつげ。
ずっと見ていたいと思ってしまった。

俺は男だ。吹雪も男だ。
なのにこの感情は、何なんだ。

感情の波が押し寄せるように、雨は激しくなった。




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