モブ吹

俺は最近よく見かける、同じ車両に乗る男の子に好意を寄せていた。その子は俺の乗る前から乗っていて、俺の降りる駅よりも三つ後の駅で下車しているようだった。よく見かけるのは朝だが、仕事が少し早く上がれた日には運が良ければ帰りにも見ることができた。男の子はたまに友達と乗っていることがあって、会話から男の子の名前は「吹雪士郎」だということが分かった。そのほかに、吹雪くんは白恋中学に通っていることも分かっている。体操着が多いが、ごくたまに制服を着ている日もあり、そんな貴重な瞬間を逃さないよう常に彼を写真に収る事にしている。そのためにわざわざ新しく画質が良くてシャッター音が出ないデジタルカメラまで購入したんだ。制服のボタンには雪の結晶をモチーフにした校章が描かれていてすぐに特定することができた。俺はもともと同性に興味があった。特に自分よりも幼い学生に。吹雪くんは俺の好みそのものだっのだ。

吹雪くんの定位置はドアのすぐそば。手すりに掴まっていたり、眠そうな日には席との敷居に寄りかかってうとうとしていた。そしていつも定期券の入っているケースを眺めていた。そこに何があるのかは分からないが、きっと大切なものなんだろうと思っていた。小柄で肌が白く、ふっさりと生えた睫毛の下にあるくりっとした丸いお目々が特徴的だ。ひとが出入りする度に揺れる柔らかそうなグレーの髪。指を通してみたらどんな感触がするだろう。

触りたい。触りたい。触りたい。

欲求が俺をつき動かそうとしていた。





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