鬼+円+豪




俺と円堂が豪炎寺の告白に付き合わされることになったのは

「もうすぐバレンタインだなー。」

帰り道に寄った商店街がピンクと茶色に染められていたのが原因だ。

「鬼道は渡すやついんのか?」
「これは女が男にチョコ渡すイベントだぞ。…今頃春奈も家でせっせとチョコを作っているに違いない。」
「え!?春奈って好きなやつがいんのか!?」
「俺宛にだ。」
「なんだよぉ。…ん?豪炎寺ー!置いてくぞー!」

振り返ると豪炎寺はショーウィンドウに飾られたチョコのサンプルをじっと見つめていた。

いつもと様子の違う豪炎寺に円堂も不思議に思ったのか、駆け寄って視線の先にあるチョコを確認した。綺麗に箱に入れられているがどうみてもただの生チョコだ。

「………なぁ、このチョコほしいのか?」

円堂が尋ねるが豪炎寺はそれから視線をそらさず、ただ「おれ、今年は渡してみようかな。」と。

「「……………………え!?」」

「豪炎寺好きなやついんのか!?」
「お前が人に心を奪われるなど…これは夢か!」

衝撃的事実だった。

恋などとは遠縁なやつだと思っていたのに、いつのまに……。

「なぁ、相手は誰だよ!?」
「…吹雪だ。」
「………ん?」
「吹雪士郎だ。」
「なんだ、友チョコか。」
「焦らせんなよなー。」
「友じゃない。本命だ。」
「「は!?」」

しれっとした顔で次々爆弾を投下していくこいつに驚きを隠せない。吹雪って、あの吹雪だよな…

「なんでまた吹雪なんだ?お前らそんなに仲良かったっけ?」
「仲良くなりたいからあげるんだ。」
「いやまぁ、そうだろうがな…」

そこを突かれるともう何も返せなくなるじゃないか。
だがその名を聞いて俺の心は少し後ろを向く。親友の恋を実らせてあげたいと思う気持ちは俺にだってある。相手が男だろうがお前が真剣なら全力で応援する。けどな、吹雪は…ちょっとな…

「豪炎寺、こんな事言いたくないんだが…吹雪は止めといた方がいい。」
「なんでだ。」
「吹雪の競争率はバレンタイン初心者には向いていない。下手したら死ぬぞ。」
「あー俺も聞いたことあるぜ。吹雪ってすっげぇ人気あるらしいな!」
「そうだ。お前のファンとはまるで違うんだぞ。」

円堂の言う通り、吹雪はすっげぇ人気がある。それは豪炎寺とはまた違うものだ。

まず第一に、男女混ざり合った吹雪ファンクラブがある。これは白恋にいた頃もそうだったらしい。女子に優しく、基本されるがままになっているがしっかり一線を置いた関係を保っているからだろう。ナニワランドなどで女子を連れていたときはただの女たらしかと思ったがそうじゃないんだ。吹雪は根がしっかりしていて、男か女かで態度を変えたりしないやつなんだ。だから男にも優しく人気がある。誰かさんと違って会話も弾むしな。そしてあの笑顔だ。納得できる。

第二に、本気で隣を狙う者が多い事だ。
豪炎寺のファンは、豪炎寺の事を好いてはいるが、無意識にある種のアイドル感覚で見ている傾向があるように思う。画面を一枚隔てているような。そしてその距離をファン同士が守る、いわば暗黙の了解。協力型だ。比べて吹雪のファンはなんとか一線を越えようとする奮闘型だ。越えられそうで越えられないもどかしさがまた一層心をくすぐるのだろう。

まぁ仮にそうでなくとも友達感覚さりげなく本命のチョコレートを渡す輩は五万といるのだ。チョコレートを渡したことがない上に好意を持っているとあれば精神的な大ダメージは否めない。

「豪炎寺、バレンタインでなくとも機会はあるぞ。」
「なんせおんなじ部活だしな!」
「俺はバレンタインがいい。」
「なぜそこまでこだわる。」
「普通のプレゼントならお返しはないがバレンタインにはホワイトデーがある。」

こいつ、お返しを狙っているのか。何気にやる奴だな。だが必ずしもお返しがあると思うなよ…。お前だってお返ししたことないくせに。と言うか直接渡された相手にもお返ししないだろ。

「まだ渡すと決めたわけじゃないんだろ?」
「ああ。」
「バレンタインまであと4日ある。しばらく考えた方がいい。」
「えー!ここまできたら渡そうぜ!?俺、豪炎寺にいつも世話んなってるからさ、こういうとこで恩返しがしてーんだよ。」
「円堂。そう急かすものではないぞ。」
「だってさぁー!」
「悪いな円堂。」

鬼道の言う通り、しばらく考えるよ。
そう豪炎寺が言ったところでこの話は終わったが、豪炎寺の想い人が吹雪だという驚き話は三人の分かれ道まで続いた。


…つづく。



@がき
久しぶり?に豪炎寺片想い話書きました。ブレイク組が話してるの好きです。なんかスパスパ指が進むのよね。豪炎寺と吹雪だとどうしても恋愛を意識してしまうのでこういう親友だな〜って場面はブレイク組が出しやすいです。本当にいまさらですが、だいーぶ前にバレンタイン過ぎちゃったのでこっちにUPしました(笑)続きます。






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