1話
"ずっと前から好きでした!付き合って下さい//"
―4月。―
入学式から3日
始業式からは一週間。
屋上からは校門で新入部員の勧誘に勤しむ円堂たちが見える。
呼び出しは高校に入ってから特に多くなった。
どうして自分なのかと本当に不思議に思う
毎回それとなく考えてはみるが、彼女の望む返事はしてやれそうにない。
俺はこれから医師を目指す身だ。
多忙な中で相手をかまえなくなるのは目に見えていたし、恋愛関係に興味がない。
サッカーへの愛だったら十分にあるがな。
「今日の子はまた特別可愛かったね〜。」
屋上からの階段を降りたところに基山がいた。
どうせ偵察にでも来ていたんだろう。どこからかため息がでる。
「人に構う暇あったら自分の彼女を大切にしてやれ。」
呆れる俺を余所に楽しそうにする基山
いつものことだ。
「やだなー。僕はただちょーーど部活が終わって、豪炎寺くんを迎えに来てあげたら聞こえちゃっただけだよ。」
「ちょーーど、な…。」
話ながら階段を降りる。
基山とは塾が同じで、講義がある日は自然と一緒に帰る事になっていた。
「で、返事は?」
「断った。」
言わなくても分かるだろう。
なんだかんだ噂はあるが実際付き合った相手は、、一人しかいない。
しかも何も発展せずの自然消滅で、中学生の恋愛なんてそんなもんだろうと自己解釈していた。
「えー、もったいないー。女の子の想いは大切にしないとダメだよ。」
「嘘をついてまで愛したくないからな。」
実際真剣になって考えた事はあまりない。
相手がその想いを伝えるのにどれだけの勇気がいるとか、分かってはいるつもりなのだが…
やっぱり俺には恋愛絡みは向いていないな。
気がつくともう玄関だった。
お互い靴を履き替える
「わー、カッコよくいってるつもり?君はそろそろちゃんと考えた方がいいと思うけどな。」
まあ基山の気持ちも少しは分かる…
だけど、
「興味がないんだ。それにそういうのは自分で見つけて手に入れたい。」
「おぉ!さすがストライカー!言ったね!言ったね!?」
なぜが騒ぎ出す基山。
こいつはこう言うのに関して好奇心旺盛だからな
女子か!
俺はそれとストライカーかどうかは関係あるのかが興味ありだ。
自転車を取りに行ってくる。と基山からの会話をそれとなく流し、駐輪場への角を曲がった。
つもりが曲がり終える前に何かにぶつかった。
いや、誰かにぶつかった。
「悪い。大丈夫か?」
とっさに謝るが返事はない。
相手も驚いたのかあせあせしていたが、顔を俯かせたままペコペコ頭を下げて行ってしまった。
ぶつかったときの軽さから女子かと思ったが、制服を見るとズボンだった。男子か。
フワッとした柔らかそうな髪質と俺の肩までしかない身長。見たことがないあたりたぶん一般クラスだな。
何となく、気になった
校門へ向かう彼の背中が見える。
今ならまだ……
まだ?
なんだ、まだって。
あぁ。そういえば基山を待たせているし、相手も気を悪くしているかもと思い
不思議な感覚を忘れるように振り切り俺もその場を後にした。