15話


豪炎寺くんがお風呂に入っている間に僕が料理する!…なんて
ふふふ、なんだか同棲してるみたい。

隠し味に、戸棚で見つけたマシュマロを使わせてもらった。まろやかになって美味しいんだよね。豪炎寺くんの口に合うといいけど…



豪炎寺くんは10分もしないうちにお風呂から上がってきた。
上半身裸で…
ちょっと、いくら僕が男でも気許しすぎじゃないかな!?上着ちゃんと着てよね。

「できたか?」

まだ煮込み始めたとこだよ。とふるふると首を振るとグッと身を乗り出して鍋を覗いてきた。その身体は僕をちょうど覆い隠してしまうくらいで、台に手をつかれると背中に微かな熱を感じた。豪炎寺くんの濡れた髪から僕の肩に雫が落ちる。
……ち、ちかいよ。

「んー、あと20分は煮込んだ方が味が出そうだな。」

耳の近くで低い声がして反射的に背筋が伸びた。

「あとは俺がやるから。」

お玉を取られそうになって慌てて身構える。どうしても僕が最後までやりたかった。途中で味見されたら隠し味がバレちゃうかもしれないし、(作り始めたのは豪炎寺くんだったけど…)僕の料理として食べてほしいから。

「ん?」

大丈夫だよ。と言うように片手で豪炎寺くんの裸の胸を押して距離をとろうとするけど、重くてびくともしない。触れた場所の予想以上に暖かい体温にすこし僕の胸はドキッと脈打った。だけどこれは夢、夢なんだ。押す力を少し強める。

「お、おい…あぶな」
「…………ひっ!?」

豪炎寺くんにばかり気を取られていたら、お玉を持っていた手を思わず鍋に当ててしまった。ほんの一瞬の事だったけど、豪炎寺くんはそれを見逃さず僕の手首を掴むとサッと蛇口をひねって水をかけた。

「…ったく、だから言っただろ。」

徐々にピリピリとした痛みを発するそこは、赤く腫れてはきたものの水ぶくれにはならなかった。
その様子にふぅ。と豪炎寺くんが安心したようなため息をもらして。

「強制退場だ。」

と僕からお玉を取り上げると肩をガシッと掴まれてソファーまで来ると強制的に座らされた。

「動くなよ。」

その言葉にまたぷくっと頬を膨らませると、両手でポシュッとつぶされて

「お前に料理させたら家が消されかねない…」

だって!?
僕なりに一生懸命やってたつもりなのにー!
頭にきて、その辺にあったクッションの片方を投げつけるともうひとつの方を抱きしめてそっぽを向いた。
もう絶対構ってやんない。

「?、吹雪?ふーぶき。」

そんな気持ちをよそに親が拗ねた子供を甘やかすみたいに呼んでくる。
もちろん返事はしない。

しばらくするとさすがに諦めたのか、やっと上着を着てキッチンに戻っていった。

僕が悪いのはわかってる。
でも自分でやりたかったんだもん…。

コテンッと横になった。後ろから何かを切る音が聞こえる。

抱きしめたクッションからは何処か懐かしいような匂いがした。





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