14話
吹雪の好みが分からなかったから、取り合えず戸棚に素が入っていたシチューを作る事にした。
鍋に具材を入れ炒めていると、脱衣場のドアが開く音がして振り向く。
「ちゃんと暖まったか?」
なんだかスッキリした顔で出てきた吹雪の頬は風呂上がりのせいか赤くなっていた。
「(ありがとう。)」
声にこそなっていないものの、口の動きだけでなんとなく伝わった。
貸したジャージは中学生の頃に着ていたものだが吹雪には大きいようで爪先や手先まですっぽり隠れている。
「シチューを作ろうと思うんだが、食べれるか?」
トテトテと側まで来ると鍋を覗き込んだ後俺を見上げてこくこくと笑顔でうなずいた。
「よかった。でもまだ出来るまで時間かかるから、適当にテレビでも…、?」
リモコンどこだったかなーって目で探していたら、吹雪に俺の袖をくいくいと摘ままれ見たら何か言っていた。今回は何を言っているのかよく分からない。
「どうしたんだ?」
吹雪は俺を指差した後に風呂場を指差し、今度は自分を差した後に鍋を指差した。
俺、 風呂、 吹雪、 鍋?
……あぁ、察するに俺に風呂に入ってこいって言ってるのか…?そして吹雪が料理すると。
「料理、できるのか…?」
なんとなく不安で聞くと、腕を組んでぷくーっと頬を膨らませてきたのが面白くて思わず笑ってしまった。
吹雪は笑われたのが障ったのか俺から菜箸を取り上げると腕をぐいっと掴んで風呂を指差した。
「はいはい、はいはい。」
早く入ってきてよ。と怒った顔で急かされて、微笑みと言うよりニヤケ顔をなんとか抑えてキッチンを後にした。
部屋に着替えを取りに行った後リビングに戻るとキッチンで吹雪は水を入れた鍋とにらめっこをしているのが見えた。
家族以外を家に入れたのだって久しぶりなのに、相手が想い人ならなおさら調子狂うな…。
嬉しいけど困った、と言うように頭をガシガシかきながら風呂場に入った。