10話
試合が終わってから雨が降り始めた。
「しゅうくん、私傘忘れちゃった。」
西田が豪炎寺にそう言っているのを聞いて、もしかしたら吹雪はこれを見て帰ったんじゃないかと半分確信していた。なんとなく、吹雪は豪炎寺に想いを寄せているような気がしていたから…
でも俺は円堂と帰る約束をしていたし、首を突っ込まない方がいいのかもしれないけど
「なぁ、豪炎寺。」
「ん?」
こんな天気だししょうがない、と西田と帰ろうとしている豪炎寺に声をかけた。
「今日な、吹雪が来ていたんだ。」
「ああ。試合の後探したんだが、見つからなくて…。」
少し落ち込んだ姿を見せる豪炎寺に、…ひょっとしたら俺が何かしなくてもなるようになるんじゃないかと期待が生まれ始めた。
豪炎寺はパッと傘を広げ、西田がそこに入った。どうやら西田の家まで送るらしい。つくづくお人好しだな。
「じゃ、またな。」
「またね!風丸」
「…ああ。気を付けろよ。」
なんとなくお互いの気持ちは察したが、まだ少し不安は残る。
「…豪炎寺。」
余計なお世話かもしれないけど、一言くらい言ってもいいよな。
顔だけで振り向く豪炎寺に「吹雪、大きな音が嫌いなんだ。」と押しておいた。何で今それを?と言う顔をしていたが、いずれ分かるだろう。俺の勘が合っていれば、たぶん豪炎寺にとってのチャンスは今日だけだ。
遠くなる豪炎寺と西田の背中を意味なく見つめる。
雨のなか一つの傘を二人でさす二人の姿は端から見ればお似合いの美男美女かもしれない。
でも俺にはお互い何かを求めているような、二人でいるのに何故か寂しそうに見えた。