7話
ピーーーーー!
っと審判の笛の音がグラウンドに響きわたる。
前半が終了した合図だ。
応援していた人たちからはたくさんの歓声。そのなかに僕たちもいる。
「豪炎寺、スゴいな!」
隣の風丸くんも、もう試合に夢中。
そう、今回だけという約束だけど豪炎寺くんがスタメンで試合に出てるんだ。
相手からボールを奪い仲間とゴールを目指す彼の姿は誠実で爽やかで、輝いていた。
他の部員と上手く溶け込めるか不安と言っていたけど、練習で彼の実力を見て監督を含め皆がスタメンに納得したらしい…。結果、豪炎寺くんはMFとしての参加だけど相手から点をバンバン取って現在3ー0
ベンチに戻る豪炎寺くんを見ていたら僕の視線に気がついて、ッフと浮かべた笑みが堪らなくカッコよかった。
…手を振ったら振り返してくれるかな?
なんか参観日に自分の子供を見つけたときのお母さんみたいで恥ずかしいけど//
恐る恐る小さく手を振ってみたら、片手を挙げて返してくれた。それだけで胸が踊って凄く幸福に満たされる。
周りの志気が上がっているせいか僕の気持ちも高まってるみたい。
「飲み物買ってくるけど、吹雪は何がいい?」
「僕冷たいココアで……あ。」
思わずの事だったけど
僕、声が…
「!……今日は調子良いみたいだな!豪炎寺にも聞かせれば喜ぶと思うぞ。」
じゃ、言ってくる。と風丸くんが応援席から離れていく。
「………あー。」
もう一回自分で確かめてみる。うん!僕声が出てる!
今までも何度か出せる時はあったけど、こんなにハッキリなんて久しぶりだ。
後で豪炎寺くんにも…。と思ったとき、脇を一人の女子生徒が通りすぎて選手のいるベンチに向かってつかつか歩いていく。
その子は、仲間と休憩していた豪炎寺くんに話しかて、いきなり抱きついた。「私のしゅうくんだよぉー!」って、遠くにいてもかすかに聞こえた。もしかしたらわざと周りに聞こえるくらいの音量で言ったのかもしれない。
その瞬間僕の頭は真っ白で…ううん。真っ暗になった。
周りの選手はひゅーひゅーと二人を冷やかしていて円堂くんもその子に何か嬉しそうに話しかけている。
もしかして、彼女さん…?
僕は混乱してぐるぐる。その上鋭利な刃物で胸をグサッと刺されたように痛くて苦しい。
その時いつのまにか胸に現れていたある感情に気づいた。そっか、
僕、豪炎寺くんが好きなんだ。