6話
「あ、吹雪。ちゃんと買ってこれたか?」
「……うん!」
購買でパンを買って来ると、風丸くんが誰かと話してて、相手の一人は豪炎寺くんだった。学校内で会えたのはこれで二回目なのにずっと一緒にいたような気がする。
豪炎寺くんと目が合うと、あ。と驚いた様な顔をした。とたん隣にいたバンダナをつけた人がぐっと顔を近づけてきた。
びっくりして後ろに後ずさる。
だ、だれ…!?
「あ。怖がらなくて大丈夫だぞ!…初めて見るな。風丸の友達か?」
「ああ。吹雪、紹介するよ。」
風丸くんが間に立って手を向ける
「親友の円堂だ。一般クラスだけど、人数多いし会ったことないかもな。」
うーん…確かに見たことないかも。でもバンダナをした人は噂で聞いたことがある。たしかサッカー部のキャプテンだったっけ…?
「円堂。吹雪だ。俺とおんなじクラスで、声が上手く出せないが耳はちゃんと聞こえてるぞ。」
紹介を聞きながらチラッと上目で彼を見ると、僕の視線に気づきニカッと笑って
「よろしくな。四組の円堂守だ。好きなものはサッカー!」
差し出された手をそっと握ると、ぐっと握り返されてぶんぶん振られる。
太陽みたいな笑顔で、なんだか暖まるなぁ…。
「それとこっちが…」
「ああ。知ってる。」
久しぶりに聞くテノール音にドキッとする。
「なんだ。知り合いだったのか…?」
「少し前に。な。」
こっちに声が向いて、僕はうんうんと頷く。
「えー!俺にももっと早く紹介しろよなー。」
「お前この間までテスト勉強で死にそうになってたからな…」
「う゛…。」
和やかな雰囲気にホッとする。なんだかいいコンビだね。
豪炎寺くんと話したかったけど、午後一番で体育だから急いでお昼を食べなきゃいけないのを忘れてた。
その場の空気を壊さないようにそっと抜けようとすると
「あ!なぁ吹雪も豪炎寺の事説得してくんねーか?」
いきなり話題を振られて"?"な僕。と呆れる風丸くん。
「まだ言ってたのか…。」
「豪炎寺ってさ、すげーサッカー上手いんだぜ!吹雪も見てみたいだろ!?」
豪炎寺くんが、サッカー…
「おい、円堂。だから無理だって。……?」
豪炎寺くんの制服の腕をクイクイと引っ張るとこっちを向く。あ、なんかこの距離新鮮かも…
じゃなくて//
「どうした?」と聞いてくる彼に期待の眼差しを送る。
「………見たいのか?サッカー。」
その答えにさっきと同じように頷く。豪炎寺くんのサッカー見てみたい!
「ほら!吹雪も言ってるし。」
「しかし…。」
お願いっ!と顔の前で手を合わせると
「………今回だけだぞ。」
「やったあーーー!」
円堂くんが万歳で喜ぶ。僕も本当に嬉しい。
そして
「い、いいのか?豪炎寺。」
と聞く風丸くんに対して
「今回だけな。」と言って僕の方を見ると小さい子にするみたいに頭をなでなでされた。
それがなんだか気持ち良かった。
教室に帰る別れ際に円堂くんが試合の日程を教えてくれた。その日は日曜日で、風丸くんと一緒に応援に行くことにした。
ふふ//
彼ってフィールドではどんな顔するんだろう…。