5話


不覚にも、可愛いと思ってしまった。


見たまんまの性格なんだな…。俺の周りにはあまりいないタイプだ。

最近の俺は気がつくと携帯ばかり気にしている。
理由はアイツからメールが来ていないかが気になるという、、なんだか女々しい自分にため息がでる。

特進と一般では時間が会わず、あれから会えていない。気がつけばそれを繕うように毎日メールで会話していた。
メアドを交換してまだ数日だと言うのに、吹雪とのやりとりは俺の携帯の送受信ランキング一位になっていた。

あいつの言葉は密かな優しさを持っていて、点数や家への名声を上げることを目指すばかりのやつらとは違う。それでなくとも、自然と心が癒された。

暇さえあれば携帯のメール作成画面を立ち上げている。夜中目覚めた時も無意識にそうしているのだから恐ろしい。さすがに送信はしなかったが。
こんなに気にかけているのに、吹雪の事は友達や親友と思えないのは何故なのだろうか……?


「ごーえんじっ!」

昼休み、購買へ行こうと廊下を歩いていたら、ばんっ。と勢いよく背中を叩かれた

「……円堂。」

円堂とは中学からの付き合いで、何て言うかいい意味で腐れ縁だ。こいつがいわゆる親友ってやつだな。高校ではサッカー部に入って、二年生ながらキャプテンを勤めている。まぁ三年がいないだけだけど…

「なぁ。テストも終わったしさ、いま忙しくないだろ?練習だけでも出てみねぇー…?」

「はぁ。それは前にも言っただろ…。」

俺は中学でサッカーを止めた。決して嫌になった訳じゃない。むしろ愛している。だが特進の授業割や講習の予定的に入部を断念せざるを得なかった。

そんな俺の思いを知ってか、円堂は試合が近づくたびに俺を誘う。今回も練習だけ、とか言ってそれだけじゃ収まらない俺を知って試合に出すつもりだ。

「でもよぉ……。特進は体育祭もまともに参加できないんだろ?ならサッカーやって思い出作ろうぜ〜?」

……俺だってやりたい事はやりたいが、一度やってしまったら止まれない気がする。高校に入ってから一度もボールを蹴っていない。ボールに触れないことでサッカーとの壁を作っているのだ。

まごまごしていたら、円堂が廊下の向こうの人物に救助要請を出した。

「かぜまるー!」

「どうした?円堂……と豪炎寺も。一緒にいるなんて懐かしいな。」

「風丸〜、お前も豪炎寺のこと説得してくれよぉ…」

「まだ言ってたのか。何度も悪いな、豪炎寺……。」

「いや、いつものことだ。」

風丸とも中学からの付き合いだ。皆のお母さんとして名高い。……一人なのは珍しいな。

と思ったとき

「あ、吹雪。ちゃんと買ってこれたか」

「……うん!」

購買の方から小さな人影が近づく。

――吹雪だ。――



そのあと吹雪に推され、練習(いや、試合か…。)に出ることになってしまった。


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